1−3−5 総合解析の概要

文献によれば、「東北東−西南西方向に延び、相対的に北側のブロックが落ちる正断層であり、海部・弥富累層より古い地層を変位させている。」とされている。

 既存ボーリング資料によれば、東海層群の落ち込みまたは深度が深くなって確認できない位置は、緑区から港区付近まで、文献で言われている天白河口断層の推定位置とほぼ同じ地点に、東北東−西南西方向に連続することが推定された。

重力探査の結果によれば、重力異常から推定される基盤構造は、知多半島での基盤勾配1.5度に比べ、名古屋港の水路部では基盤勾配が12度と急勾配を示し、断層の存在が推定された。重力異常とTalwaniの方法で求めた地下構造より、天白河口断層、あるいは類似の北落ち縦ずれ断層の存在する可能性が大きいことが推定された。

音波探査の結果によれば、S測線南側(追加距離1290〜2900m)、S測線北側(追加距離400〜980m)とN測線には、断層は存在しないものと考えられる。S測線の中央付近(追加距離980〜1290m)は、深度70m以下の反射面の連続性が不明瞭で反射記録が悪く、断層による地層の乱れによるものと考え、その両側に東海層群(P)を切る断層が推定された。

 浅層反射法探査の結果によれば、東海層群(P1〜P4)の明瞭な反射面が認められ、測線北側(追加距離0〜800m)と南側(追加距離1300〜2000m)は、反射面がほぼ水平に分布して乱れがなく、断層は存在しないことが確認できた。測線中央(追加距離840〜1250m)に、F1〜F4の4条の断層が認められ、第三紀中新世の中新統(M)〜鮮新世の東海層群を切っている断層群の存在が確認された。断層の傾斜はほぼ70〜80度で、その形態は階段状北落ちの正断層と考えられる。東海層群の変位量に累積性はほとんどなく、東海層群堆積の後期以降、断層運動が開始されたものと推定される。

音波探査・浅層反射法探査の両者とも、浅部断面の反射面の連続性はあまり良くなく不明瞭であり、かつ、既存ボーリング資料による地層の対比であることから、第四紀中期以降の地層の変位の有無及び変位量については今後の確認調査で明らかにする必要がある。

 断層の分布位置より南側の東海層群は、音波探査では約3〜5度と非常に緩く北に傾斜し、浅層反射法探査ではほぼ水平に反射面が連続する。両探査測線は、東西の水平距離で約700m離れているため、地層の傾斜が変わることはあり得ることである。

 音波探査及び浅層反射法探査結果によって推定・確認された上記の断層群は、その分布・走向・傾斜・落ち方向などを総合判断して、文献で言われている天白河口断層に相当するものであることがほぼ確実である。

 各調査結果をまとめると、天白河口断層に関する位置は図1−3−7図1−3−8に示すとおり、東北東−西南西の方向に連続する。音波探査及び浅層反射法探査からの断層通過位置は、約300〜400mの幅をもっているが、文献で言われている天白河口断層の推定位置を含む北側に存在するものと考えられる。

 以上のとおり、推定されていた天白河口断層の存在が確認された。ただし、今回の調査は、音波探査と浅層反射法探査の各1測線だけの結果であり、最新の地層を変位させている断層通過位置の精度向上と、断層の活動度についての精度向上が今後の課題として挙げられる。

図1−3−7 天白河口断層に関する位置図(1/50,000)

図1−3−8 物理探査による断層位置図(1/10,000)