(1)陸域の断層

雲仙地溝南縁西部断層帯の陸域の断層では、活動性に関する情報は得られていないが、全体的に、リニアメントが明瞭さに欠けることから、完新世に活発な活動したとは考えにくい。

1)塔ノ坂断層

塔ノ坂断層は金浜断層の北東延長にあたり、北東−南西の走向で古期雲仙火山後期の溶岩を南落ちに変位させている。古期雲仙火山前期溶岩(440ka)を基準面としたときの上下方向の変位量は72mで、平均変位速度は0.16m/千年となり、活動度はB級である。塔ノ坂断層の活動時期に関する情報は得られていない。

2)小浜北断層

 小浜北断層は北東−南西の走向で、古期雲仙火山後期の溶岩を南落ちに変位させている。高岳溶岩(246ka)を基準面としたときの上下方向の変位量は50mで、平均変位速度は0.20m/千年となり、活動度はB級である。小浜北断層の活動時期に関する情報は得られていない。

3)小浜断層

 小浜断層の西部は東西走向で、東端部は北東−南西走向で北へ曲がっており、古期雲仙火山後期の溶岩を北落ちに変位させている。絹笠山溶岩(232ka)を基準面としたときの上下方向の変位量は西部で95m、東部で110mであり、平均変位速度はそれぞれ0.41、0.47m/千年となり、活動度はB級である。小浜断層の活動時期に関する情報は得られていない。

4)金浜断層

金浜断層は、北東から南西に流れる金浜川に沿う北落ちの断層で、東部(金浜川上流)では北東−南東走向で、西部(金浜川下流)ではほぼ東西走向である。リニアメントは金浜川中・上流では明瞭であるが、下流では不明瞭となる。

金浜川の南側には古期雲仙火山前期の噴出物が分布し、北側には古期雲仙火山後期の溶岩等が分布しており、金浜断層付近が両者の分布境界とされている(図3−4)。

地表踏査の結果による、金浜断層周辺の地質図と地質断面図を図7−28に示す。

金浜川中流のリニアメント位置において、古期雲仙火山前期の火砕流堆積物を北落ちに変位させる断層露頭を確認したが、断層上部に被覆層がなく活動時期は不明である(図7−28の断層露頭@:図7−1の地点W)。この断層の走向はほぼ東西で、北東−南西に曲がる金浜断層リニアメントに一致しない。一方、金浜川上流部では、リニアメント位置に、断層面が南に傾斜した断層露頭を確認した(図7−28の断層露頭A〜C:図7−1の地点X)。この断層の変位の向き及び活動時期は不明である。

古期雲仙火山前期の高位扇状地面(450ka)を基準としたときの上下方向の変位量は東部で145m、西部で215mであり、平均変位速度はそれぞれ0.32、0.48m/千年となる。一方、地質断面図から算出した古期雲仙火山前期の火砕流堆積物(450ka)の上下方向の変位量は90〜75mと見積もられ、平均変位速度は0.17〜0.20m/千年となる。以上より、金浜断層の活動度はB級となる。

5)諏訪池断層

諏訪池断層は、諏訪池南岸に沿った、東西から南西−北東の走向の断層で、先雲仙の侵食起伏面や古期雲仙前期の扇状地を、北落ちに変位させている。先雲仙の侵食起伏面(>500ka)と古期雲仙火山前期の高位扇状地面(450ka)を基準したときの上下方向の変位量はそれぞれ80mと45mで、平均変位速度はそれぞれ0.18m/千年以下と0.1m/千年となり、活動度はB級〜C級である。諏訪池断層の活動時期に関する情報は得られていない。