(7)赤松谷断層

赤松谷断層は、既往文献では、水無川右岸(南岸)の低位扇状地V面(8ka)を北落ちに変位させているとされてきた。

低位扇状地V面上のリニアメント位置で掘削したトレンチでは、約8,000年前以前に堆積した低位扇状地V面構成層には断層を示すような変状は確認できなかった。リニアメント位置に数回の河川浸食が観察されたことから、赤松谷断層のリニアメントとされた低位扇状地V面上の北落ちの低崖は、河川による侵食崖と考えられる(図7−25図7−1の地点V)。

さらに、東方延長部の水無川下流では、新期の土石流堆積物に覆われてリニアメントは判読されない。また、海岸付近における既往ボーリング資料によれば、完新統を変位させる断層は存在しない。

水無川付近の地形区分図を図7−26に、地表踏査による水無川の断面図を図7−27に示す。断面図に示すように。低位扇状地V面は水無川の両岸に分布しており、両者に数m以上の高度差は認められない。

以上の結果から、低位扇状地V面の形成前に活動した断層が、地下に伏在している可能性は否定できないものの、8,000年前の低位扇状地V面形成以後は、数m以上の変位を生じるような断層活動はないと考えられる。

一方、トレンチ地点西方のには、2万3,000年前に形成された古江火砕流堆積面を切る、比高約60mの北落ちの直線的な崖がある。これが断層崖であるとすると、その平均変位速度は2.61m/千年となり、活動度A級の断層ということになる。しかしながら、低位扇状地V面に顕著な断層変位が認められないことと矛盾する。