(4)布津断層

布津断層は、俵石岩屑なだれ堆積面や低位扇状地T面を北落ちに変位させる断層で、東端は島原湾内に連続する。

俵石岩屑なだれ堆積面(60ka)や低位扇状地T面(90ka)を基準面としたときの上下方向の変位量はそれぞれ25mと88mで、平均変位速度はそれぞれ0.42m/千年、0.98m/千年となる。また、地質断面図から読み取った、俵石岩屑なだれ堆積面の上下方向の変位量は15〜20mで、平均変位速度は0.25〜0.33m/千年である。同じく地質断面図から読み取った湯河内火砕流(Y2,Y3)堆積物(90ka)の上下方向の変位量は40〜70mで平均変位速度は0.44〜0.78m/千年である(図7−21)。以上より、布津断層の活動度はB級と評価される。

低位扇状地T面構成層を北落ちに変位させる断層露頭では、断層落ち側の崖錐堆積物中の姶良−Tn火山灰(26−29ka)相当層が変形しているのが確認された。また、トレンチ調査の結果によれば、鬼界アカホヤ火山灰(7.3ka)が混入したローム層が断層で変位しており、さらに540〜310年前を示す表土層中に、断層面から割れ目が連続しているようにみえる(図7−23図7−21のトレンチA:図7−1の地点S)。

したがって、布津断層は少なくとも7,300年前以後に活動したと考えられ、540−310年前以降に活動した可能性もある。

また、布津断層落ち側でのボーリング調査の結果、縄文海進最盛期直前(7,400年前)の海岸線付近の地層が、現在標高−5.26mに沈降していることが確認された。長岡他(1997)による縄文海進最高海面との比較から、7.4ka以降の変位量は4〜5mと推定される。これより平均変位速度は0.54〜0.68m/千年と見積もられる(図7−24図7−21のボーリングA)。