(3)唐比低地(千々石断層西端部)

既往文献(九州の活構造、新編日本の活断層等)では千々石断層の西端は唐比低地東端(唐比漁港西側)の低崖までとしている(図7−5図7−6図7−1の地点C)。

活断層詳細デジタルマップ(2002)では、この低崖の西方の唐比低地北側の丘陵の鞍部に断層(確実)が延長するとしている。一方、平成14年度調査における空中写真判読では、唐比低地内に南落ちの段差が認められた。また、松岡他(1990)や松岡・竹村(1993)は、千々石断層西端部の唐比低地における完新統の沈降を指摘している。平成14年度に実施した唐比低地内のNo.2ボーリングでも縄文海進以降に約11m沈降していることが確認された(図7−7)。

反射法地震探査及び群列ボーリングにより、活断層詳細デジタルマップに示された確実断層の位置には完新世に活動した断層は存在しないことが確認された(図7−8図7−9)。

唐比低地東部のA−1測線における反射法地震探査では、断層が確認できないことから、断層が想定される唐比低地北端を横断するA−3測線において群列ボーリングを実施した(図7−10)。

唐比低地の北側のボーリングNo.12では(諫早に対して)縄文海進以降0.7m沈降しており、唐比低地内のボーリングNo.11では(諫早に対して)縄文海進以降約9m沈降していることが確認された。したがって、ボーリングNo.11地点は、ボーリングNo12地点に対して、縄文海進以後約8m沈降していると考えられる。上述の唐比低地内のNo.2ボーリングともあわせて、縄文海進以降の平均変位速度は1.40〜1.70m/千年でA級を示す。

群列ボーリングの結果からは、断層は確認出来なかったが、ボーリングNo.11からNo.13にかけて5,500年前以降の地層が急傾斜となっていることから、唐比低地北端付近に千々石断層の西方延長が伏在している可能性が高い。

一方、唐比低地周辺のボーリングにおける堆積速度変化からも、唐比低地全体が国道北側に対して沈降をしたと考えられる(図7−11)。

また、伏在断層落ち側のNo.11ボーリングにおける珪藻化石による古環境分析から、縄文海進後の海水準低下により淡水環境になったが、約4,500年前頃に海が再進入したと推定される。一方、堆積速度変化からも、4,500〜5,000年前ごろに、急速な沈降(No.14、No.15ボーリングでは約1m)が示唆される(図7−11)。したがって、この伏在断層は4,500年前頃に活動した可能性がある。