(5)火山灰分析

表5−5に分析結果を、図5−8に火山ガラスの屈折率頻度分布図を示す。

火山灰試料の採取は5cmごとに連続的に採取された試料より、火山砕屑物を多く含むものを抽出し分析に供した。火山灰層そのものからの選択的試料採取は行っていないため、採取層準が層厚の薄い火山灰層や、他の砕屑物と火山灰の層境界にあたる場合は、混合した情報になっている。また、再堆積した火山灰層との明確な区分も困難である。以上の採取試料の状況に起因する精度の限界を念頭に置いて、検討を行った。

 本年度採取した4本のコアのうち、TAT04−14、TAT04−03、TAT04−07、TAT04−05からそれぞれ5試料の火山灰分析を実施した。分析結果から、20試料中16試料については、含有鉱物が円磨されているものが多く、また火山ガラスの含有率が20%程度以下と少なく、火山灰層としては評価が困難であると考えられることから、本論においては対比について検討していない。

火山灰層と考えられる以下の4試料について、記載岩石学的特徴をのべる。

@TAT04−14(920−925)

火山ガラスの含有率は90%程度。鉱物は円磨されているものが大半を占める。重鉱物は斜方輝石・単斜輝石を多く含み、また角閃石も含む。火山ガラスの形態はHa、Hb、Tb型が卓越する。火山ガラスの屈折率はn=1.509−1.517を示す。

ATAT04−03(755−760)

火山ガラスの含有率は40%程度。鉱物は円磨されているものが大半を占める。斜方輝石を多く含み、角閃石も含む。火山ガラスの形態はTb、 Hb型が卓越する。火山ガラスの屈折率はn=1.510−1.517を示す。

BTAT04−07(1095−1195)

火山ガラスの含有率は75%程度。鉱物は円磨されているものが大半を占める。重鉱物は斜方輝石を多く含み、また角閃石も含む。火山ガラスの形態はHa、Hb、Tb型が卓越する。火山ガラスの屈折率はn=1.510−1.516を示す。

CTAT04−05(975−980)

火山ガラスの含有率は85%程度。鉱物は円磨されているものが大半を占める。重鉱物は斜方輝石を多く含み、角閃石も含む。火山ガラスの形態はHb、Ha、Tb型が卓越する。火山ガラスの屈折率はn=1.509−1.515を示す。

以上の火山灰層については、円磨されている鉱物粒子が多く、火山灰由来の本質結晶でない可能性が高いことから、重鉱物組成の特徴は比較対象としない。いずれの火山灰層も、火山ガラスの形態的特徴および屈折率は類似している。またこれらの特徴は、K−Ah火山灰層の特徴と類似する。 このため、これら4試料の火山灰層はすべてK−Ah火山灰層に対比される。

火山灰層は上記4層のみであるが、前述したように20試料すべてにわたって円磨された鉱物粒子が多く含まれる。また、いずれの試料の鉱物組成も斜方輝石>角閃石>不透明鉱物>単斜輝石でありよく類似すること、少量ではあるがガーネットや岩片等を含むこと等から、これら試料に含まれる鉱物は砕屑物起源のものを主体としていると考えられる。全コア、全層準においてこれらの砕屑物に顕著な変化が認められないことから、砕屑物の供給層(岩体)は変化しなかった可能性が高い。