(1)大深度探査

探査の方法は、地表付近が砂礫を主体とした堆積物で覆われていること、また、広馬場付近では口之津層群の上面が深度数百mにあると予想されることから、探査深度を1000mとし、起震源としてバイブロサイスを使用して、浸透力の大きなP波による反射法地震探査を実施した(図4−41)。

バイブロサイスを使用するに当たり、道路状況から、島原城付近を中心とする北側のA測線と、広馬場付近を中心とする南側のB測線のほぼ南北方向の2側線を設定した。想定される断層が、東西走向と考えられることから、A測線の南端とB測線の北端がオーバーラップするように測線を配置した。また、A測線については、受振点を起震測線南端より約400m延長して、測線南端の解析精度をあげた。

A測線は1400m(受振点配置は1800m)、B測線は2600mである。起震は基本的に10m間隔、受振点も10m間隔とした。起震の強度や回数については周辺の建物等の状況により調整した。一部、交差点や橋上では起震ができなかった。

探査の結果、A、B測線ともに深度500m〜600m程度まで記録が得られた。A、B側線の探査記録記録(深度断面)を図4−42及び図4−44に、探査結果の解釈図を図4−43及び図4−45にそれぞれ示す。

@A測線

A測線では、測線の北端(標高−50m付近)から測線の南端(標高−120m付近)に向かって南になだらかに傾斜する連続的な強い反射面が認められる。反射強度や深度分布から、この強い反射面は口之津層群の上面と考えられる。

その下位の口之津層群内では、全体的に南に傾斜する層構造が認められる。測点800付近から測点1200付近にかけては、口之津層群内に層構造の乱れが認められるが、口之津層群の上面を示すと推定される強い反射面には断層の存在を示すような段差は認められない。

一方、口之津層群の上位の雲仙火山噴出物では、層構造は余り明瞭ではないが、大きな変位を伴うような断層の存在を示す構造のギャップは認められない。

AB測線

B測線では、測線の北端から測点1300付近までは、A測線と同様に、緩やかに南に傾斜する、口之津層群の上面と推定される強い反射面が連続する。

口之津層群の上面を示すと推定される強い反射面が、測線の北端では標高−150mに認められ、測点800付近から傾斜がやや大きくなり、測点1300付近では標高−200m付近に達する。この区間では、下位の口之津層群内では、やや傾斜が大きいものの、南へ傾斜する単純な層構造が認められる。また、上位の雲仙火山噴出物内では、ほぼ水平な連続性の良い反射面が認められる。

測点1300から1600の間では、口之津層群の上面の強い反射面が不明瞭になる。測点1600付近から南側では、口之津層群上面は大きく落ち込み、標高−500m付近をほぼ水平に、南側へ連続する。

この区間の口之津層群内の構造は、測点1200付近から南への傾斜が大きくなり、測点1800より南側では褶曲構造が認められる。また、上位の雲仙火山噴出物内では、口之津層群上面の落ち込みと調和的に測点1500付近から南へ傾斜し、測点2100付近まで盆状の構造を示す。

以上の結果から、測点1400から1600にかけての区間で、口之津層群及び雲仙火山噴出物が全体的に南へ落ち込んでおり、南落ちの断層が想定される。その変位量は口之津層群上面で200mないし300mである。

反射法地震探査の結果から推定される断層の位置と変位量は、既往ボーリングによって推定された位置及び変位量と整合的である。

今回のバイブロサイスによる反射法地震探査の記録からは、標高−50m以浅には反射面が殆ど確認されず、断層によって雲仙火山噴出物のどこまでが変位を受けているか確認できない。そこで、地下浅部の地下構造を検討するため、以下に述べる中深度反射法地震探査を実施した。