3−3−5 測地学的データ

江頭他(1987)は島原半島東部海岸部で、有明町から布津町に至る水準測量を実施し、島原市北端付近の測点4284を基準として、島原市から深江町にかけての範囲が、1958〜1987年の28年間に最大97.1mm沈降しているのを観測した。この区間では、国土地理院の1894年の水準測量データからは、最大208.1mm沈下している。したがって、雲仙地溝における過去100年間の沈降速度は2〜3mm/年と見積もられる(図3−17)。

島原半島東海岸沿いにおける沈降の北端は、測点4286と測点4287の間にあり、南端は測点4921と4923の間にある。北端は雲仙地溝北縁の東方延長部にあたる島原市付近で、太田(1987)が指摘した、基盤深度が南側が落ち込んでいる場所にほぼ一致する。一方、南端は深江・布津断層に一致する。

 したがって、雲仙地溝内では、明治以降に地震活動を伴わない沈降が続いていることになる