5−3 海域断層のまとめ

平成14年度及び平成15年度調査による橘湾の断層分布図を図5−3−1に示す。調査海域以外の地域については既往文献(松岡・岡村、2000)による断層分布をあわせて示す。

橘湾中央部は音響錯乱層のため断層の有無が確認できない地域があり、この地域に未知の断層が隠れている可能性もある。しかしながら、平成14年度の橘湾北部における音響錯乱層分布地域における音波探査結果では、従来よりも性能の高い探査機器を使用したにも関わらず、既往調査で確認された以外には大きな変位を示す断層は認められなかった。したがって、現在知られている断層以外には、K−Ah層準を数m変位させるような活動性の高い断層が存在する可能性は低いと考えられる。

平成14年度と平成15年度調査の結果及び既往調査結果から橘湾では東西走向の多くの断層が分布していることが明らかになった。これらの橘湾の断層はその地理的分布から大きく3つの断層群に区分される。

第1に千々石町沖合から諫早市有喜沖にかけての橘湾北部沿岸沿いの東西方向に連続する断層群、第2は小浜町金浜沖合から西北西に向かって橘湾北西部の牧島沖に至る断層群、及び第3の南串山町沖合から橘湾南部を西方に連続する断層群である。本報告書では、これらをそれぞれ橘湾北部断層群、橘湾中部断層群、橘湾南部断層群と仮称する(註)。

今年度調査で確認された橘湾西部(茂木沖)の断層群は、橘湾南部断層群の延長とも考えられるが、落ちのセンスや活動性の傾向から、雲仙活断層群とは別の断層群と考えられることから別に扱う。

(註)橘湾の範囲は、島原半島南端の瀬詰崎を東端とし、長崎半島南端の野母崎を西端とされている。これに従えば南串山から茂木沖に至る断層群は橘湾のほぼ中央ややや南寄りに位置することになるが、本調査における調査範囲の南部に位置し、しかも雲仙活断層群の橘湾における南縁をなす断層群と考えられることから、本報告書では橘湾南部断層群と呼ぶ。

平成14年度と平成15年度調査において、橘湾北部断層群の有喜沖(F−4断層)、橘湾中部断層群の金浜沖(F−1〜F−3断層)、及び両断層群のほぼ中間に位置する橘湾中央断層(F−5断層)について、ピストンコアによる試料採取を行い、試料分析によって各断層の活動性評価を行った。試料採取位置を図5−3−1にあわせて示した。

参考資料として、平成14年度に実施した橘湾南東部のF−1〜F−3断層における対比基準面の一覧表を表5−3−1に示す。

平成14年度と平成15年度調査において、断層の活動性評価を行ったF−1〜F−5断層の変位量を図5−3−2に示す。なお、図5−3−2は前節の図5−2−8と同様に、各断層両側のコアの最上位対比基準面を変位量の基準として示してある。

各断層におけるイベント層準を表5−3−2及び図5−3−3にまとめた。ここに示した年代はすべて暦年である。

以下に断層毎にイベントについて示す。