5−3−4 音波探査記録から推定した断層の活動性

音波探査においては、音響散乱層分布域を除けば橘湾のほぼ全域に、音響基盤(洪積層上面)上の沖積層中の中位よりやや下位に明瞭な反射面が連続している。試料採取に基づく試料分析結果から、この反射面は粗粒な堆積物の層であることが確認され、さらにK−Ah火山灰降下層準に対比される。

表5−3−2には、詳細な活動性評価を実施した断層に関して、音波探査記録から読み取ったK−Ah層準反射面の変位量とK−Ah火山灰の年代(7.3ka)から求めた平均変位速度をあわせて示してある。これから、音波探査記録より読み取ったK−Ah層準以降の平均変位速度は、試料分析による対比に基づいて求めた平均変位速度とあまり大きな差は認められない。

したがって、試料採取に基づく詳細な活動性評価を実施しない断層に関しても、イベントの時期や回数は特定できないものの、音波探査記録から求めたK−Ah層準の変位量から概略の評価が可能であると考えられる。

今後は、橘湾全域及び島原湾全域の音波探査記録から、K−Ah層準の変位量を再検討し、海域断層の活動性を検討する必要がある。