4−9 柳原断層

柳原断層は大苑断層とともに、雲仙地溝の東部南縁を成す深江断層・布津断層よりも南に位置する。両断層の走向はほぼ東西で西端部で北西−南東へ屈曲し、ともに低位扇状地T面を数m変位させる北落ちの断層である。

北から南に傾斜する低位扇状地T面に明瞭な逆向き低崖を形成していることから、九州の活断層(1989)、新編日本の活断層(1991)では確実度T、中田・今泉(2002)でも確実断層とされている。しかし、分布位置、変位量から雲仙活断層群においては主要断層とは考えられず、深江断層・布津断層に付随する断層と推定される。

柳原断層・大苑断層付近の地形区分図を図4−9−1に示す。

平成14年度調査においては柳原断層のリニアメント位置の露頭Aにおいて、約2mの露頭欠如区間の両側で、低位扇状地T面の構成層の走向傾斜が急変しており、露頭欠如区間に断層が存在する可能性を報告した(図4−9−2)。

また、リニアメントの近傍の露頭Bにおいて、低位扇状地T面の土石流堆積物中にリニアメントとほぼ平行な地割れを確認した(図4−9−3)。

その後、露頭Bとリニアメントの間に、道路工事による新規露頭が出現した(露頭C)。この露頭Cにおいては、露頭Bと同様に低位扇状地T面の土石流堆積物中にリニアメントと平行な地割れが観察された(図4−9−4)。この露頭では複数のリニアメントにほぼ平行な地割れが発達しており、その一部は土石流堆積物の上面に達し、割れ目に上位の礫混じりロームが落ち込んでいる。

土石流堆積物の上位の礫混じりロームと地割れ中の礫混じりロームからは、ともにK−Ah火山ガラスの混入が認められた。また地割れ中の礫混じりロームの14C年代測定の結果は650−530 ybp(暦年)と非常に新しい年代を示した。

地割れ中のロームには植物根の混入も認められ、肉眼では除去できないものが残っていた可能性もある。また、地割れ中のロームの年代が地割れの形成時期を示しているかどうかも検討の必要がある。

いずれにしても、この地割れは600年前には存在していたことは確実である。この地割れが柳原断層の活動に伴って形成され、地割れの開口直後にローム層が落ち込んだとすれば、柳原断層は600年前ごろに活動した可能性がある。

柳原断層及び大苑断層付近は断層の活動性を明らかに出来る適地がないが、圃場整備工事等による新規露頭が出現する可能性があり、今後も調査を継続する。