(2)布津断層トレンチ

トレンチ掘削に際し、断層の走向と地形及び人工改変の関係から、東面のみが断層を覆う被覆層が観察可能であったため、東面のみスケッチを実施した。トレンチの法面スケッチを図4−6−19に、法面写真を図4−6−20に示す。

トレンチ法面では低位扇状地T面構成層の土石流堆積物と崖錐堆積物が走向N32W傾斜78NEの断層で接している。トレンチでは断層は1条しか観察されない。断層落ち側に扇状地構成層が確認できないことから、上述した断層露頭の2条の断層のうちの北側の断層の延長と考えられる。

断層の上がり側には扇状地構成層の土石流堆積物の上位に礫混じりロームが堆積し、それを暗褐色のシルト質表土が覆っている。一方、断層の落ち側には扇状地構成層は認められず礫混じりローム層が分布し、断層上がり側と同じくシルト質表土が覆う。地表には法面掘削に伴う人工的な埋土が覆っている。

礫混じりローム層の上面は断層によって北落ちに約70cm変位しており、不明瞭な割れ目がシルト質表土中に延長する。

シルト質表土の下部の14C年代測定結果は、断層から延長する不明瞭な割れ目の両側で540−310 ybp(FTT−15)と540−470 ybp (FTT−17)(いずれも暦年)を示した。この結果から、布津断層は500年前以降に活動したと考えられる。

火山灰分析の結果からは、断層落ち側の崖錐堆積物のローム層中にはK−Ah火山ガラスの混入が確認されたことから、この断層は上記500年前以降の活動以前にもK−Ah火山灰降下後に活動していたことを示す。一方、断層上がり側ではローム層中にK−Ah火山灰が確認されなかったことから、断層上がり側のローム層は上部が欠如していると考えられる。