(1)布津断層露頭

トレンチ調査と同時に、平成14年調査で報告した布津断層露頭もその後の掘削で露頭形状が変化したため、再度整形して掘削面の露頭スケッチを行った。断層露頭のスケッチを図4−6−17に、露頭写真を図4−6−18に示した。

この露頭では断層が2条認められる。

南側の断層は走向傾斜がN44W、70Nの北落ちの断層である。この断層は低位扇状地T面構成層の土石流堆積物嶐堆積物に挟在される砂層やシルト層を切っており、扇状地構成層の土石流堆積物を変位させているが、対比可能な鍵層がないため変位量は不明である。断層落ち側の土石流堆積物の上位には砂質ロームが堆積しており、小断層によって北落ちに約40cm変位している。

一方、北側の断層は走向傾斜がN56W 76Nの同じく北落ちの断層で、断層落ち側は、露頭で確認できる最下部まで礫混じり粘土質ロームが分布する。

断層落ち側の崖錐堆積物の礫混じりローム中には、暗褐色の腐植混じりローム層が2枚認められ、暗褐色層の傾斜が断層に向かって急傾斜となっている。断層付近では暗褐色層が不明瞭となっており、断層で切られているかどうかは確認出来ないが、この暗褐色層堆積後に断層が活動したと推定される。

14C年代測定結果による2枚の暗色帯の年代は、下位層が22,790±620 ybp*、上位層が16,220±300 ybp*を示した。この年代値は24−25ka*(町田・新井、2003)とされるAT火山灰降下時期よりも新しい。

火山灰分析結果では、風化のため火山ガラスの含有量が少なく、少量の雲仙起源の火山ガラスが確認された。明確なAT火山灰の火山ガラスは更に上位の層準からしか確認出来なかった。

断層運動で変形を受けたと考えられる暗褐色層の年代測定結果から、本露頭位置における布津断層は、2万年前以降に活動したと考えられる。

*注:暗色帯下位層の年代が14C年代測定における暦年較正限界を超えているため、これらの年代値は同位体分別補正後の年代値である。暦年では上位層は20,360−18,300 ybp、AT火山灰は26−29kaとなる。