4−6−1 平成14年度調査の概要

深江断層と布津断層は雲仙地溝東部の南縁をなす断層で、地形的に明瞭であり比高100m以上の断層崖を形成している。図4−6−1に深江・布津断層周辺の地形区分図を示す。

平成14年度調査において、深江断層および布津断層のそれぞれにおいて、リニアメント位置に断層露頭を確認した。

このうち布津断層(図4−6−2−1図4−6−2−2:断層露頭C)では、リニアメント位置の土取場の法面に低位扇状地T面構成層の土石流堆積物と崖錐堆積物が接している露頭を確認した。断層落ち側の崖錐堆積物中にはAT火山灰(26−29ka:暦年:町田・新井、2003)が挟在されており、布津断層は少なくともAT火山灰降下以降に活動したと考えられる。しかし断層の地表部は人工的に削られており、最新活動時期に関する情報は得られていなかった。

また、深江断層では低位扇状地T’面を構成する火砕流堆積物および土石流堆積物が断層で切られている露頭を確認した(図4−6−2−1図4−6−2−2:断層露頭@)が、断層上部は被覆層がなく断層の活動時期に関する情報は得られなかった。この露頭の東にも、同じくリニアメント位置に扇状地堆積物と崖錐堆積物が接する露頭(図4−6−2−1図4−6−2−2:断層露頭A)を確認したが、断層面は不明瞭で確認出来なかった。

平成14年度調査の結果、深江断層・布津断層の変位量が大きく、また地質分布から扇状地の形成と同時期に活動していた可能性が推定された。

深江断層・布津断層の活動性を評価する上で、変位基準面としての扇状地面の年代および扇状地構成層の層序・構造を明らかにする必要が出てきた。最近、低位扇状地T面及びT’面の構成層に関して、野岳起源の湯河内火砕流堆積物に関する論文が公表された(立山他、2002)。この湯河内火砕流堆積物をトレンチ調査やボーリング調査における地層対比の基準として断層の活動性を検討するため、低位扇状地T面及びT’面の地表踏査を実施した。