4−5−2 赤松谷断層トレンチ

地表踏査の結果、旧大野木場小学校及び国土交通省砂防みらい館の西側の扇状地面上を流下する小沢に沿ったリニアメント位置でトレンチ調査を実施した(図4−5−3−1:写真@、B、C)。

赤松谷断層トレンチのスケッチを図4−5−4、法面写真を図4−5−5に示す。スケッチには14C年代測定試料の採取位置及び測定結果を示す。年代値は全て暦年で示す。

法面観察及び年代測定結果から、赤松谷断層トレンチで確認された層序は以下の通りである。トレンチ法面で確認された層序及び年代測定結果を表4−5−1に示す。

下位よりA層(土石流堆積物:礫主体)、B層(土石流堆積物:砂主体)、C層(腐植混じりローム層)、D層(砂礫)、E層(チャネル@堆積物)、F層(黒ボク)、G層(チャネルA堆積物)、H層(チャネルB堆積物)、I層(表土)の9層に区分される。

A層とB層の土石流堆積物は良く締っており、B層の時代が約8000年前であることから扇状地V面構成層と判断される。A層はトレンチ全体に連続し、土石流堆積物中の礫の配列には赤松谷断層リニアメントを挟んで、断層の存在を示すような変位、変状は認められない。

B層はトレンチ法面の南側では厚いが、中央では分布せず、北側では西面のみに薄く分布している。これらの分布及びB層中の堆積構造が切られていることから、B層は堆積後に、西から東へと扇状地面上を流下した河川による侵食を受け、トレンチ地点付近には扇状地面上に比高差2mの北落ちの低崖が形成されたと考えられる。A、B層を覆うC、D層は、この低崖を埋めるように堆積したと考えられる。

C、D層堆積後に、幅約2m深さ約1mの河道が形成され、礫混じりシルト質ロームのチャネル@堆積物により埋められている(E層)。一旦、トレンチ付近全体が黒ボク層(F層)で覆われた後、再び河道が形成され、チャネルA堆積物が河道を埋めた。

最後に現在の小沢とほぼ同じ位置に河道が形成されチャネルB堆積物が堆積した。

トレンチ地点の西方で行われている権現脇遺跡発掘調査地点では、低位扇状地V面上の黒ボク層から縄文晩期の遺物が産出しているが、F層(黒ボク)の14C年代測定値は1700〜1000年前を示す。

トレンチ調査の結果、赤松谷断層リニアメント位置では、約8000年前より古い低位扇状地V面構成層の土石流堆積物の堆積構造がリニアメント位置の両側でほぼ水平に連続しており、断層の存在を示すような変状は認められない。

リニアメント位置では扇状地構成層のB層を削剥した河川により北落ちの低崖が形成されて以後、時代によって多少の位置のずれはあるものの、西から東へ流れる河道が少なくとも3回形成されている。

以上の結果から、赤松谷断層リニアメントとされた扇状地面上の北落ちの低崖は、約8000年前以降、扇状地面上を西から東へ流下した河川の浸食崖であると判断される。

表4−5−1 赤松谷断層トレンチにおける層序表