(1)トレンチA

断層露頭で確認された断層の走向(N75W)の西方延長部の尾根でトレンチを掘削した。

トレンチ法面スケッチ及び法面写真を図4−6−6−1図4−6−6−2図4−6−6−3に示す。

このトレンチ法面では、地表から約2mで舞岳火山の風化火砕岩を確認した。基質は風化してローム化している。この風化火砕岩を覆って黒ボクが堆積しており、その上位にAT火山灰が確認された。さらに上位には軽石を含む原口町火砕流が分布する。原口町火砕流の上位には、トレンチの南端付近に礫石原火砕流堆積物が分布する。

林道法面では礫石原火砕流堆積物の上位に湯江川火砕流堆積物が堆積しているが、トレンチでは含礫ローム層のみで火砕流堆積物としては認定出来ない。最上位には風化ロームとそれを覆うK−Ah火山灰、表土が分布する。

舞岳の風化火砕岩を覆う黒ボク層、AT火山灰層及び原口町火砕流堆積物には、リニアメントとほぼ平行な東西方向(N81E〜N86W)の割れ目があり、これらの地層を最大20cm北落ちに変位させている。これらの小断層はさらに上位の含礫ローム層(湯江川火砕流堆積物相当)に及んでおり、含礫ローム層の割れ目に上位の風化ロームが落ち込んでいる。風化ローム層中には割れ目は認められず、K−Ah火山灰層にも達していない。

一方、下位の舞岳火砕岩中についても小断層が連続すると推定されるが、風化によって基質が粘土化しており、割れ目や変位は確認出来なかった。

トレンチの北端から南端まで全域にわたって、上述した地層がほぼ水平ないしやや南傾斜で堆積しており、林道法面で確認されたAT火山灰や原口町火砕流堆積物を切る断層は確認出来なかった。

また、トレンチで確認された層序はAT火山灰の下位の黒ボクが直接舞岳の火砕岩を覆っており、林道法面における断層落ち側で観察された層序と同じである。

このトレンチ掘削の結果からは、断層落ち側と考えられるAT火山灰層や原口町火砕流堆積物地層が小断層で北落ちの変位を示しているものの、断層本体は確認出来なかった。そこで、このトレンチをトレンチAとして埋め戻し、北東側にトレンチBを再掘削した。