(1)A−2測線

A−2測線における反射法探査結果から、中田・今泉(2002)のリニアメント位置付近の表層堆積物に何らかの境界が存在する可能性が想定されたことから、A−2測線においてボーリング調査を実施した。

ボーリング位置を図4−2−1に、ボーリング柱状図を巻末資料に、ボーリング柱状断面図を図4−2−7に、ボーリングのコア写真を巻末および図4−2−14に示す。

ボーリングはA−2測線の距離程で北から85m地点(No.6孔)、75m地点(No.3孔)、55m地点(No.8孔)、48m地点(No.9孔)、40m地点(No.7孔)で実施した。

中田・今泉(2002)のリニアメントはNo.3−No.8間に、また、反射法探査で想定された表層堆積物の境界はNo.6−No.3間に位置する。

何れのボーリングでも、有喜火山岩類を基盤とし、その上位に基底礫岩(砂礫)、そして完新統の泥炭・シルトが堆積している。完新統の最下部の14C年代は暦年で約7000年前から8000年前を示した。

基盤の有喜火山岩類は、測線北側のNo.6、No.3、No.8ではやや風化した輝石安山岩溶岩とその上位の基質が風化した凝灰角礫岩(No.8)よりなり、No.9では強風化した輝石安山岩溶岩よりなる。測線南端のNo.7では風化安山岩の上位に軽石混じりの凝灰質シルトが堆積している。このような基盤の岩相の違いから、No.7孔とNo.9孔の間およびNo.9孔とNo.8孔の間に断層の存在が想定されるが、落ちのセンスや落差等は不明である。

一方、A−2測線における基盤上面は、多少の凹凸(標高+0.2m〜−3.2m)がある。No.7〜8孔間で基盤上面がやや高くなっているのは、測線西側の丘陵の影響と考えられる。

反射法探査の結果、中田・今泉(2002)に示されたリニアメント位置には唐比低地のボーリングで示された、縄文海進時の地層を10m以上も変位させるような変位を伴う断層の存在は確認されない。

ボーリング結果によるA−2測線の反射法探査結果の解釈を図4−2−8に示す。

基盤上面は測点100付近で最も深くなっている。この付近は谷の曲がりの位置にあたり、谷を侵食した河川による掘り込みと考えられる。側点110付近から測点70付近の沖積層中に見られる南へ傾斜する反射面(青線)は、ボーリング結果から測線北側(上流側)のNo.6、No.3孔のみに分布する沖積層中の礫混じり砂層と判断される。反射法探査で想定された測点80付近を境とする表層の速度値の違いは、この礫混じり砂層の分布に起因する可能性が高い。