(1)A−1測線

唐比低地東部のA−1測線では、南端の測点0から測点290までポータブルバイブによる探査を、また測点0から測点200(国道251)の区間に関してはミニバイブによる探査を合わせて実施した。重力探査はA−1測線全体で実施した。図4−2−2に探査結果を、図4−2−3に探査結果の解釈図を示す。

測線には側点40付近で水路、測点200付近で国道251号を横切っており、これらに伴う擁壁や橋により反射像が影響を受けている。

平成14年度調査の空中写真判読によるリニアメントは測点110付近を通る。

国道より北側の測点200〜290間は雲仙火山麓扇状地の麓に沿っており、完新統が薄く、基盤上面はGL−10m付近で水平構造を示す。

国道の南側では、基盤上面からの反射はポータブルバイブでは測点0〜80の区間では記録が不鮮明なため確実ではないが、基盤上面はGL−15m付近から北に向かって徐々に下がり、測点80付近でGL−28mと最も深くなる。測点80から側点130付近までは明瞭な反射面が北に向かって徐々に浅くなる傾向を示し、測点130付近から測点200(国道)に向かって基盤上面が浅くなっていくと推定される。

測点80付近から測点140付近の間には沖積層中に2〜3枚の水平構造を示す反射面が認められる。

測点80より南側では、沖積層中に不規則な反射が見られ、基盤上面の反射も不明瞭となっている。こうした反射像の乱れは、湿地に道路を建設する際に路盤を安定させるためかなりの厚さの地盤改良が施工されたことに影響されている可能性がある。

よりエネルギーの大きいミニバイブによる反射断面では、基本的にポータブルバイブと同様の結果が得られた。基盤上面の反射面は測点0から徐々に深くなり、測点50付近から測点130付近までは明瞭な反射面が認められ、測点80〜90付近でGL−18mと最も深くなる。北側では測点130から測点200(国道)に向かって急速に浅くなる。

ミニバイブによる反射断面では、測点100〜130付近の基盤内に南傾斜の反射面の不連続が認められ、測点80〜120付近の基盤上面とした反射面の下位に数枚の反射面が認められる。これは南傾斜の断層とその上盤側の成層した地層の存在を示す可能性もある。しかし、測点50〜80間は基盤上面の強い反射面が認められることから、下位の複数の反射面は基盤上面の多重反射の可能性が高い。

基盤内の南傾斜を示す反射面については、基本的に塊状と想定される有喜火山岩類の基盤内に見られる反射面が何を意味する不明なため、その不連続が断層の存在を示すものかどうか不明である。

重力探査の結果では、基盤上面に断層を示すような段差等は認められず、基盤上面は緩やかな盆状構造をしていると解釈される。このことは上述した反射法探査結果と調和的である。

以上の反射法探査・重力探査の結果から、国道より南側の測点80から測点200の間では、基盤上面に断層を示すような段差等は認められない。

平成14年度調査の空中写真判読による千々石断層延長部のリニアメントは測点110付近を通る。後述するA−3測線におけるボーリング結果からは、この位置に断層が存在する可能性がある。

A−1測線の反射法探査結果で、測点80より南側で反射像が不明瞭になっていることが断層の存在を示している可能性もある。しかしながら道路建設に伴う地盤改良や擁壁の影響から記録が不鮮明であり、断層の存在を否定も肯定も出来ない。