(4)微化石分析結果のまとめ

微化石分析により明らかとなった、唐比地域及び深江・布津断層地域の堆積環境の変遷を以下にまとめる。各ボーリング結果による珪藻化石分帯を表4−11−3−10表4−11−3−11表4−11−3−12表4−11−3−13表4−11−3−14に示す。

F3およびF5試錐における花粉分析の結果は、古環境・時代を推定できるだけの十分な花粉化石が検出されなかった。

@ K11試錐

・K11−T帯(深度10.20m〜8.20m)

・K11−T−1亜帯(深度10.20〜9.40m)

:おおむね湾奥の塩分濃度が不安定な海域(汽水域)であったものと推定された。また、上位に向かい塩分濃度が低下した可能性が示唆された。

・K11−T−2亜帯(深度9.00m)

:沿岸部における後背湿地化した可能性が考えられ、一時的な海退の可能性が示唆された。

・K11−T−3亜帯(深度8.60〜8.20m)

:海域であるが、若干、閉鎖的な海域、すなわち湾奥等の入江付近の環境下にあったものと推定された。

・K11−U帯(深度7.80m〜1.85m)

・K11−U−1亜帯(深度7.80〜5.80m)

:沿岸部の後背湿地であるが、ある程度の水深のある場所も多かったものと推定された。

・K11−U−2亜帯(深度5.40〜4.60m)

:ある程度の水が存在する池沼の環境にあったものと推定された。

・K11−U−3亜帯(深度4.20〜1.85m)

:水位が下がり、湿地の環境下にあったものと推定されるが、幾分、塩性湿地化していた可能性が考えられた。

A K12試錐

・K12−T帯(深度7.50〜5.60m)

・K12−T−1亜帯(深度7.50および7.20m)

:内湾奥部の海域の環境下にあったものと推定された。

・K12−T−2亜帯(深度6.80〜5.60m)

:おおむね湾奥部の汽水域の環境が推定された。

・K12−U帯(深度5.20〜3.20m)

・K12−U−1亜帯(深度5.20および4.80m)

:珪藻化石の産出率が低く、堆積環境の推定は困難であった。

・K12−U−2亜帯(深度4.40〜3.20m)

:沿岸部の干潟域から後背湿地付近の環境下にあったものと推定された。

・K12−V帯(深度2.80〜0.85m)

・K12−V−1亜帯(深度2.80〜2.40m)

:沿岸部の後背湿地の環境であったものと推定された。

・K12−V−2亜帯(深度2.00〜0.85m)

:陸上であり、低地に見られるような淡水の湿地の環境が推定される。

B F2試錐

・F2−T帯(深度49.73〜41.60m)

:珪藻化石が全く検出されず環境の推定は困難である。おそらく、続成作用により、珪藻の殻は完全に溶解消失したものと思われる。

・F2−U帯(22.90m)

:低地部における河川の氾濫の影響を受けるような場所で、通常は好気的な状況下にあるような場所であったと推定された。

・F2−V帯(14.83m〜5.30m)

:内湾から沿岸部の海域の環境下にあったものと考えられ、海進期の堆積物の可能性が示唆された。

C F3試錐

・F3−T帯(深度27.99〜26.00m)

:海域であるが、内湾奥部や沿岸部で淡水が流入して塩分濃度の変化が激しい海域であったものと推定された。

・F3−U帯(深度22.60〜1440m)

:陸域の好気的な環境下にあったものと推定された。

D F5試錐

・F5−T帯(深度17.85m〜17.10m)

:全体に産出率が低く、数個体の珪藻化石から環境の推定を行うのは困難である。

・F5−U帯(深度5.55m〜2.60m)

・F5−U−1亜帯(深度5.55〜4.10m):内湾奥部の環境が推定された。

・F5−U−2亜帯(深度3.90〜3.50m):陸の干潟域に近接した沿岸海域が推定された。

・F5−U−3亜帯(深度3.30〜2.60m):内湾奥部の環境が推定された。