4−11−1 火山灰分析

地層対比及び堆積年代を検討する目的で火山灰分析を実施した。分析項目は鉱物組成分析、銃鉱物分析、火山ガラス形態分類及び火山ガラス屈折率測定を実施した。テフラの特定を確実にするため1試料については鉱物屈折率測定も実施した。

分析試料はボーリングコア及びトレンチ法面において火山灰層の可能性のあるもの選んで採取した。また、これらのボーリング調査やトレンチ調査の結果を検討するため、調査地点周辺の地質・層序を確認するための踏査を行った際に、露頭で確認した地層の対比や堆積年代を検討するため火山灰分析を実施した。

雲仙地域は対比基準となるテフラが少なく、それらも地層中に分散していて肉眼で火山灰層と確認できない場合が多い。したがって地層対比を目的とした火山灰層の確認のため採取・抽出した火山灰層のすべてについて、火山ガラス屈折率測定を含めた火山灰分析を実施した。

分析結果の一覧表を表4−11−1−1表4−11−1−2表4−11−1−3に示す。個々の分析試料採取地点・採取層準については、上述した各地点の図及び写真に示し、得られた分析結果についての検討を記した。表4−11−1−1表4−11−1−2表4−11−1−3の備考欄には分析結果によるテフラの対比結果を示した。

島原半島地域では、火山ガラス屈折率が1.5前後を示す火山灰が各層準に多く認められる。これらの屈折率1.5前後を示す火山灰の一部は、火山ガラスの色や形態からAT火山灰(26−29ka)と判定される。しかし、それ以外のものは調査地域の各層準から産出し、雲仙火山の噴出物と考えられ、一覧表では雲仙系とした。

以上の示したように雲仙地域では火山ガラスの屈折率では雲仙火山噴出物の対比は出来ない。これらの火山灰を区別できれば雲仙火山の噴火史を解明するための有効な手段となる可能性がある。火山ガラスの化学成分分析や随伴する鉱物の屈折率・化学分析によってはこれらが区別される可能性もあり、今後の研究の進展が期待される。

調査地域における対比に有効な広域テフラとしては、上述のAT火山灰の他には、K−Ah火山灰(7.3ka)とAso−4火山灰(85−90ka)が識別された。なお本報告書においては、これらの広域テフラの降下年代(暦年)は町田・新井(2003)に従う。

これらの広域テフラが検出された試料の多くは、火山ガラスの含有量や層序関係から二次堆積と推定されるものが多く、その層準がテフラの降下時期とは断定できないものの、テフラ降下時期より上位の(時代的に新しい)地層であることは確かである。

特にK−Ah火山灰は調査地域に広く分布すること、7.3kaという降下年代から完新世の断層活動を示す指標となることから、最も重要なテフラである。

本調査における海域の音波探査においても、更新統と推定される音響基盤の上位に広く追跡される明瞭な音響反射面が、ピストンコアの分析からK−Ah層準と確認されており、海域断層の認定及び活動性評価の基準層準となっていることからも、K−Ah火山灰は重要である。