2−2−7 深江断層

深江断層は雲仙地溝の東側南縁に位置する北落ちの断層で新期雲仙火山の野岳期に形成された低位扇状地面T’面とその構成層およびこれを覆う俵石岩屑なだれ堆積物を変位させていると推定される。断層崖の比高は最大約100mに達する。

深江町古江名水源神社南西の深江断層の断層崖の西端付近において、深江断層リニアメント位置に、北落ちの断層が2地点で観察された。

露頭A(図2−2−10)は深江断層の断層崖に刻まれた小沢の出口に位置しており、深江断層のリニアメント位置に当る。断層落ち側には幅1〜2mのブロックのみが露出しており被覆層は分布しない。また断層上がり側の表層は、厚さ40cmの薄い腐植土が被覆しているのみである。このため、新しい時代の断層活動の評価は困難である。

また、本露頭では、断層上がり側の凝灰角礫岩中に、北落ちで落差約1.6mの小断層も存在する。断層直上を新しい土石流堆積物が覆っているが、断層変位が土石流堆積物に及んでいるかどうかは明瞭でない。

一方、露頭Bは、露頭Aの東側の沢にあり、深江断層リニアメント位置に当る。この露頭では、低位扇状地T面構成層の土石流堆積物と崖錐堆積物が接している。断層落ち側の崖錐堆積物中には年代決定に有効な火山灰の挟み層や炭化物はみられず、断層活動の評価は困難である。

深江断層の中央付近の断層崖は開析が進み、崖下は崖錐堆積物堆積物や土石流堆積物に覆われており、トレンチ等で断層の活動性を評価するには適さない。

一方、東部では断層は3条に分岐しており、海岸に向かって断層崖も低くなっている。3条の分岐のうち、中央のものは低位扇状地T面を変位させており、深江断層の活動性を評価するのに適していると考えられる。したがって、断層東端部においてトレンチ調査を実施し深江断層の活動性評価を行う。

また、断層両側でボーリング調査を実施し、断層両側での地層対比により活動履歴の検討を行う。