(2)千々石断層南分枝

千々石断層の南分枝リニアメントとほぼ平行する林道法面に、リニアメントとほぼ平行な南落ちの断層露頭を確認した(図2−2−7)。

この断層付近には古期雲仙火山後期の舞岳火山の自破砕状安山岩溶岩を、新期雲仙火山起源と考えられる軽石を含む火砕流堆積物、礫石原火砕流堆積物、湯江川火砕流堆積物が覆っている。

断層落ち側の軽石流堆積物の下位にはAT火山灰層が断層により変位している。AT火山灰の下位の黒ボク質暗褐色粘土層の14C年代値は25,140±150ybp(暦年補正なし)を示した。

AT火山灰の上位の軽石流堆積物の下半部は灰色であるが、上半部は暗灰色を呈する。火山灰分析の結果からは上下で岩石学的特徴に差は無く、両者の色の差は風化程度の違いによると考えられる。軽石流堆積物の下半部は断層付近で途切れており、断層による変位を受けているように見える。一方、上半部はブロック化するものの断層面を乗り越えて分布する。

軽石流堆積物の上位には14C年代値で18,520±100ybp(暦年補正なし)を示す黒色土を挟んで礫石原火砕流堆積物が堆積する。さらに上位には、16,090±80ybp(同上)を示す黒色土を挟んで湯江川火砕流堆積物が堆積している。

軽石流堆積物が断層で切られているかどうかの判断は、法面と断層面がほぼ平行なことからこの露頭では困難である。しかしながら、この断層の最新活動時期については、AT火山灰降下(26−29ka)以後、礫石原火砕流堆積(19ka)までの間と判断される。

本断層の最新活動時期に関する検討には、断層と直交する方向のトレンチ調査を実施する必要がある。