(1)調査の目的

島原市内の千々石断層の東方延長にあたる地域は、雲仙岳の火砕流堆積物、岩屑なだれ堆積物および土石流堆積物等に覆われており、空中写真判読や地表踏査の結果でも断層位置の特定が困難である。

一方、温泉ボーリングのデータからみると、雲仙火山の基盤に200mもの落差が生じており、雲仙地溝の北縁がこの付近に伏在していると考えられている(太田、1987)。さらに、1792年の地震に伴い島原城内において地割れが生じたとの古文書記録から、活動性の高い断層の存在も考えられる(井村・江越、2000)。

したがって、島原半島最大の都市である島原市の中心部を通る可能性が高いことから、防災上の観点からも、千々石断層東方延長部の位置と活動性に関する情報は重要である。また、千々石断層は雲仙活断層群の北縁をなす断層であり、西端部や東部では完新世における活動を示す証拠も得られており、雲仙活断層群の活動性評価において重要な断層のひとつである。

島原市内における地表での調査は困難であるが、物理探査やボーリング調査によって地下構造を明らかにすることにより、断層の位置・活動性に関する情報を取得する。