3−4−2 原生沼

島原半島における活断層の活動履歴を解明するためには、変位基準面の年代決定の指標として、雲仙火山等からもたらされた火山灰層序の確立が必要である。そこで普賢岳に近く、雲仙火山の噴出物が最も良く保存されていると予想される原生沼においてボーリング調査を実施することが調査委員会で決定された。

一方、原生沼は雲仙天草国立公園特別地域内および国指定の特別名勝温泉岳内にある。さらに、原生沼には「原生沼沼野植物群落」として天然記念物(国指定)に指定されている湿原植物やレンゲツツジやカキツバタの群落があり、近年は土砂の流入などにより湿原の乾陸化が問題となっている。

このような状況から、雲仙講演管理事務所、長崎県教育庁と協議した結果、現状を改変させる恐れがあるボーリング調査は困難であるとの結論に達し、原生沼における調査は不可能であると判断した。

原生沼で予定していた雲仙火山の火山灰層序の調査は、雲仙火山噴出物の保存の点でやや劣るが、田代原におけるボーリング調査で実施することとした。