3−3−4 深江断層

深江断層は雲仙地溝の東側南縁に位置する北落ちの断層で新期雲仙火山の野岳期に形成された低位扇状地面T面とその構成層およびこれを覆う俵石岩屑なだれ堆積物を変位させていると推定される。断層崖の比高は最大約100mに達する。

深江断層周辺のルートマップを図3−3−25に断面図を図3−3−26に示す。

低位扇状地T面の構成層は、下位より順にクサリ礫を含む風化の進んだ古期火砕流堆積物、新鮮な新期火砕流堆積物、最上位の土石流堆積物から成る。リニアメントを横断する方向では、これらの堆積物の分布は、地形から推定される断層の落ち側(北側)に階段状に低下している。一部では断層崖斜面の地形的に高い位置に古期火砕流堆積物が分布し、その前面のより低い位置に新期火砕流堆積物が分布している。これは平行する複数の断層が存在する可能性を示しているとも考えられるが、断層崖の落ち側の低地を流下した新期火砕流堆積物が斜面にはりついている可能性もある。地表踏査では確実な結論を得るには至っていない。

リニアメント中央付近の断層崖は開析が進み、崖下は崖錐堆積物堆積物や土石流堆積物に覆われており、トレンチ等で断層の活動性を評価するにはあまり適していない。

一方、東部では断層は3条に分岐しており、海岸に向かって断層崖も低くなっている。断層崖は開析をあまり受けておらず直線的である。3条の分岐のうち、中央のものは低位扇状地T面を変位させており、深江断層の活動性を評価するのに適していると考えられる。深江断層東部の地形区分図を図3−3−27に地形写真を図3−3−28に示す。

深江町古江名水源神社南西の深江断層の断層崖の西端付近において、空中写真判読による深江断層のリニアメントに一致する位置に、北落ちの断層が2地点で観察された。断層露頭周辺のルートマップを図3−3−29に示す。以下に各断層露頭について記す。