3−2−1 地形区分

雲仙地域の地形は雲仙火山の溶岩円頂丘とその周囲の崖錐、流出した溶岩による地形、火砕流や岩屑なだれによる地形、さらには火砕流・岩屑なだれ・土石流等による火山麓扇状地が発達し、その他に山体崩壊による崖錐、谷底平野・沖積平野が区分される。この他崩壊地形や直線的な崖等が認められる。

地形区分に際しては、空中写真判読結果と、地表踏査による現地確認の結果とあわせて区分を行った。さらに、星住らによる雲仙火山形成史を参考にして、各地形の形成時期を推定した。

空中写真判読による地形区分を表3−2−1に示す。

雲仙火山の山麓扇状地の区分については扇状地を形成した火山体の噴出年代により区分した。すなわち、古期雲仙火山前期に形成されたものを高位扇状地面、古期雲仙火山後期に形成されたものを中位扇状地面、新期雲仙火山に形成されたものを新期扇状地面とし、各時代の中で比高差のある面を細区分した。これらの扇状地面の区分は、その形成時代の推定に一部違いがあるものの、基本的には従来の地形面区分と概ね同じ結果となった。各面と従来の地形面区分との対比を表3−2−2に示す。

これらの扇状地面の多くは雲仙岳の北側と南側に分かれて分布しており、雲仙岳を挟んだ南側と北側の対比には直接の証拠はなく不明の点がある。今後、各扇状地面の構成層の時代を決定していく必要がある。

中位扇状地T面は、千田(1979)、堤(1987)、国土地理院(1991)の中位扇状地面および長岡(1995)の瑞穂面・山ノ上面・愛野面に対比される。空中写真判読結果からは、中位扇状地T面を細分する地形高度の差は認定できなかった。

雲仙火山北麓に分布する中位扇状地U面は、千田、堤、国土地理院の低位扇状地T面および長岡の百花台面に対比される。百花台面の構成層は魚洗川火砕流堆積物(211±9ka、Hoshizumi他、1999)と指交関係にあるとされている(長岡、1995)。したがって、ここでは百花台面を中位扇状地U面に対比した。

一方、千田、堤、国土地理院が低位扇状地T面とした雲仙岳南麓の布津町から有家町にかけて分布する扇状地は、上流部で新期雲仙火山の野岳由来の俵石岩屑なだれ堆積物に覆われる。この面を低位扇状地T面とした。

この低位扇状地T面は布津断層により変位を受けているように見えるが,地表踏査の結果からは、布津断層の上がり側と落ち側の面構成層に違いも認められる。今後の調査において扇状地の構成層の層序およびその時代を明らかにし、面区分の再検討を行う必要がある。

また、水無川の南側では、水無川の南の低位扇状地V面よりも高い標高を持つ面が深江断層崖の北側に分布する。これを低位扇状地U面とし、地表踏査によって上流では火砕流堆積物、下流部では土石流堆積物から構成されることが確認できたので、低位扇状地Ub、Uc面として細分した。一方、島原市千本木付近に分布する礫石原火砕流堆積物に覆われる低位扇状地Ua面が分布するが、この面と低位扇状地Ub、Uc面との関係は面構成層の層序・時代が不明なため確定できていない。