(3)唐比低地のボーリング資料

唐比低地は雲仙地溝の北縁をなす千々石断層の西端部に位置する。千々石断層は唐比低地の東側で顕著な断層崖が終わり、文献(活断層研究会、1991等)では千々石断層は唐比低地内へは延長していない。低地の東南部は約800mの礫堤(標高0.5m以下)で橘湾と境され、背後は標高100m前後の丘陵で囲まれている。低地内には大きな河川の流入はなく、海跡湖が湿地化したものと推定されている。

唐比低地付近の地質は長崎県(1974)によれば唐比低地の周囲の丘陵は森山安山岩(複輝石安山岩)からなり、低地の北縁部では表層7mまで泥炭が堆積し、以深は砂礫となっている(図3−1−19、上図)。

松岡他(1990、1993、1996)の唐比低地でのボーリング調査によると、地表から−9.63mまでは泥炭層が堆積し、−10.88m以深では海成泥層が堆積している。その間は海成泥層と泥炭層が互層を成すとされている。−11.70m〜−11.75mにアカホヤ火山灰が出現することから、海側が落ちる運動を想定して、その変位速度を1.94mm/年と見積っている。また−30.15mの貝化石や−32.58m、−33.15mの泥炭の14C年代は4万年以上を示し、さらに−35.35〜−35.80mには阿多鳥浜火山灰(230−250ka)があると報告している(図3−1−19、下図)。