(1)基盤

島原半島の地質は、南部に分布する第三系と口之津層群を基盤とし、中・北部には基盤を覆って雲仙火山が分布する(図3−1−9)。

口之津層群は更新世前期の地層で、下位より大屋層、加津佐層、北有馬層と同時異相の南串山層に区分される。

大屋層はシルト層・砂礫層等の河成堆積物からなり火砕流堆積物により上下に2分される。挟在される火山灰や火砕流堆積物から得られたフィッショントランク年代は、大屋層下部層が1.89±0.16Ma、上部層が1.76±0.22Ma(岡口・大塚、1980)である。加津佐層は大屋層を傾斜不整合で覆う砂・シルト・凝灰角礫岩からなる。南方系のシカ化石を含む脊椎動物群を産する。南串山層は加津佐層を不整合に覆い、複輝石安山岩・ホルンブレンド安山岩質の火山角礫岩・凝灰角礫岩を主体とし最上部に玄武岩溶岩(諏訪池玄武岩)を伴う。北有馬層は浅海成のシルト・砂層からなる。口之津層群は全体として東西走向で南に緩傾斜しているが、雲仙地溝の北側では南に、地溝の南側では北へ階段状に落ち込んでおり、島原半島の中・北部では地表に露出しない。

倉沢・高橋(1965)は口之津層群形成後の火山活動で噴出した玄武岩溶岩・安山岩溶岩を南島原火山岩類と呼んだ。玄武岩はカンラン石玄武岩で、安山岩は玄武岩と雲仙火山岩類の中間的化学組成を持つ複輝石安山岩である。

大塚(1966)は口之津層群を覆うホルンブレンド安山岩角礫を含む雲仙火山第T期の噴出物を竜石層と呼んだ。本層からは0.29±0.06Maのフィッショントラック年代が得られている(岡口・大塚、1980)。