(1)基本手順

データの処理の目的は、記録された波形を処理して、地下構造を表す断面を作成することである。データ処理の手順を図2−3−3−1に示し、その概略を下記に説明する。

@ 前処理

a)データの転送と編集

磁気テープから処理装置にデータり転送を行う。不必要なショットレコード及びトレースを除き、利得回復・振幅調整を行う。

b)ジオメトリーの定義

受振点及び発震点の座標を入力し、各ショットの受振パターンを定義する。処理ラインを設定し、CDPビンサイズを定義する。

A 重合前フィルター

a)デコンボリューションフィルター

震源波形、地層特性等反射地震記録にコンボリューションの関係で含まれている基本波形をインパルスに短縮するフィルターの一種で、具体的な効果は以下の通りである。

様々な周波数成分もつ間延びした反射シグナルをインパルスに近い(高周波かつ分解能の高い)シグナルに変換する。

主として浅部の影響による重複反射波を除去または弱め、独立した反射波に変換する。

b)帯域通過フィルター

信号である反射波とノイズである他の振動との周波数帯域が異なっている場合には、反射波の帯域のみを通す帯域通過フィルターをかけることにより、S/N比の向上が期待できる。そのためには周波数領域でフィルターを設計し、それをフーリエ変換して時間領域のフィルターオペレーターを求め、地震記録にコンボリューションする。

c)F−Kフィルター

地震記録(得られた反射地震記録)上の主として表面波によるリニアーなノイズを除去するために使用する。具体的には、地震記録の周波数領域におけるある傾き(速度)をもつノイズ群を除去し時間領域に逆変換して出力を得る。

B 静補正

表層及び下層中での地震波の速度差による反射波の遅速、表層の厚さの変化による反射波の遅速、発震点及び受振点の標高差等を補正する。具体的には、ある基準面(Datum Plane)を設けて、あたかもその基準面上で測定が行われたかのように、各発震点、各受振点の記録を上下する。

C 速度解析

CDP重合に用いる重合速度分布を求める処理である。速度解析の方法としては定速度走査法と定速度重合法がある。本処理においては併用した。ここで求める速度は、重合速度と呼ばれ、水平多層構造を仮定した場合、RMS速度に一致する。

D NMO補正とCDP重合

CDPアンサンブル(各CDP毎に対応するトレースを集めたもの)を発震点〜受振点間距離の違いによる反射波の到達時間の遅れを補正し、発震点と受振点が同じ場合(ゼロオフセット)の時間に合わせる操作がNMO補正である。NMO補正を行うにはあらかじめ地下の速度分布を設定する必要があり、通常は速度解析により得られた速度分布を用いる。このNMO補正後のCDPアンサンブルを足し合わせて反射シグナルを強調する操作が水平重合である。

E 残差補正

表層補正や高度補正を施した後でも、初動屈折波と反射波の経路の違いによる時間の不規則性や2層構造仮定を採用したために、局地的な速度の異常に関するものは完全には補正されず、CDPアンサンブル内での同一反射の到達時間は一定ではないのが普通である。水平重合反射法地震探査においては、最適なCDPアンサンブル群が得られるように統計的処理を施してこの時間差を補正し、各発震点及び受振点における2次補正値を求める。

F 重合後フィルター処理

帯域通過フィルター、F−Kフィルター、デコンボリューションフィルター、コヒーレンシーフィルターなどが使用される。

G マイグレーション

反射法において、傾斜している反射面を空間的に正しい位置に戻す操作である。マイグレーションの具体的な方法としては、ディフラクションマイグレーション、反射事象のピッキングマイグレーション、波動方程式マイグレーション、F−K領域マイグレーションがある。

H 深度変換

NMO補正で用いた重合速度を使用して得られた反射断面の縦軸を時間から距離に変換する。

図2−3−3−1データ処理流れ図