(3)調査結果

種々のデータ処理を行った結果、表層の地質状況を最も良く表現できている

nearトレースの深度断面図(マイグレーション後)に、ボーリングデータを追加して解釈を行ったのが図1−3−3−2である。

標高400m付近には、連続する明瞭な水平方向の反射面が認められる。これをボーリング結果と比較すると、段丘堆積物、烏帽子岳火山噴出物の未固結堆積物と中古生層の砂岩・泥岩の境界とほぼ一致する。また、この深度はP波速度2km/secの境界付近に当たっている。ただ、B−2孔に見られる段丘堆積物と烏帽子岳火山噴出物の反射面は記録には明瞭に捉えられていない。ボーリングコアでの固結程度や礫の混入度等が類似しているため、物性の明瞭な違いがないものと考えられる。ただし火山性の堆積物であり、広域に分布しているものと考えられる。

これより深い基盤中の構造については、反射波の連続性に乏しく構造についての有意な結果が得られなかった。本地域の基盤は付加帯と考えられ、その構造は複雑なものになっていると推定され、本データのみでの解釈は困難と思われる。

この反射断面とボーリング結果より未固結堆積物の構造について検討した結果、那留断層の存在については、中位段丘堆積物の基底を切っている活断層と考えられる那留断層は存在しないことが明らかになった。

また、反射法探査の結果では、基盤(中・古生層(美濃帯))の上面と考えられる反射面に、B−1ボーリングの南側で約15mの段差が認められており、この位置に相対的北側隆起の断層が推定れる。

これが中位段丘堆積以前に活動していた那留断層である可能性がある。

断層のセンスは、基盤中の反射面の実体が不明なため、推定することはできない。

また、平面的な分布については反射断面からの推定は困難であり、地質概査・精査でも那留断層の断層露頭は確認できていない。したがって、地形調査で得られた低断層崖の可能性のある段丘崖とその南方に連続する鞍部を推定断層として考えることとする。推定断層の方向は、露頭の詳細観察により確認された断層の方向と調和的である。

基盤上面の反射面のずれにより推定された那留断層の活動時期は、烏帽子岳火山噴出物堆積以降、中位段丘堆積物堆積以前である。この活動時期は、那留地点の詳細観察により存在が明らかになった断層の活動時期に矛盾しない。

変位量は、中位段丘堆積物による侵食量が不明のため上限は明らかでないが、反射断面上では垂直成分で15mの変位を示しており、15m以上の垂直変位量があると考えられる。

中位段丘堆積物の堆積年代は得られていないが、一般に考えられている12〜13万年を用いて、平均変位速度を算出すると 0.13m/千年 となりB級であると考えられる。A級となるためには、中位段丘堆積物による侵食量が100m程度必要となり現実的ではない。いずれにせよ、中位段丘堆積以降活動していないため、起震断層になるとは考えられない。

図1−3−3−2 地質構造解釈図