(1)変位量について

・地質断面図(図5−1−2)を考慮すると礫層1は礫層2より多くのイベントを経験している。

・礫層2の基底には,断層を挟む約60mの区間で比較的明瞭な撓曲構造が読みとれる(図5−1−3)。

・断層を挟む約60mの区間で計測される礫層2基底面の鉛直変位量は,約4〜5mである(図5−1−3)。

・同じく,礫層2の上面の鉛直変位量は2〜3m程度である(図5−1−3)。

・礫層2基底面の鉛直変位量(4〜5m)は,礫層2上限面の分布から想定される鉛直変位量(2〜3m)に対し有意に大きく,礫層2堆積以降(約9,500年前以降)に2回の断層活動が想定できる。

・礫層2基底面の鉛直変位は,約1万年間に4〜5mで,これから概算される平均鉛直変位速度は,0.5m/千年程度である。この値は,周辺の段丘面(H1面・M2面)の変位量から算出した平均鉛直変位速度0.4〜0.8m/千年に調和的である。

・トレンチ増掘部地表付近の断層両側に分布する礫層2上面および腐植質砂礫層上面の変位を,断層沿いに計測した値は,2〜2.5m程度である(図5−1−4)。

・トレンチ・SB3孔・SB4孔のデータを総合すると(図5−1−2),トレンチ地下の前縁断層部では,礫層2の基底部に最大で3m程度の変位が判読可能である(鉛直変位では最大1m程度)。この値は,トレンチ増掘部地表付近の断層沿いの変位量2〜2.5m(鉛直変位:0.8m程度)と同等ないしはやや大きく,礫層2基底部堆積以降1回ないし2回の活動を示唆するものと考えられる。