(2)デ−タ処理の流れおよび各デ−タ処理の内容

デ−タ処理の流れを図3−4−9に示し,以下にその内容を述べる。

○ジオメトリの設定

測線(発振点、受振点)の位置,標高等のデータを設定して,CDPライン(CDP番号,座標,標高等)を定義する。

○フォ−マット変換

磁気テ−プに記録されているデ−タを,処理システムで使用できるフォ−マットに変換する。

○記録編集

フィールドデータの内で品質の悪いデータを除去したり,極性(データの±)が逆になっているデータを直したりする処理。

○ゲインリカバリー

振源から発生した波動は地盤中を球面状に拡散しながら伝播していくために,その過程でエネルギーが急速に減衰する。エネルギーは伝播距離に応じて減衰するが,実際には非弾性減衰の影響なども加わって,より大きく減衰する事が多い。そこで,実測データの振幅がどうのうように減衰するかを解析して,それを補正する関数を決定する。

但し,特に陸上での反射データは,ショット毎,オフセット毎等で振幅のばらつきが大きく,適当な関数が決定できない場合がある。こういう場合は後で述べる振幅調整によって,この処理を代用することもある。

○バンドパスフィルタ−

S/N比の悪い周波数帯域をカットするために特定の周波数帯域だけを通過させ,それより高周波数の帯域と低周波の帯域とを遮断するフィルター。また,状況によっては,データに50Hzまたは60Hzの電気ノイズが混入していることがある。このような時には,周波数周辺の非常に狭い周波数帯域のみ遮断するフィルターを適用することがある。これを特にノッチフィルターと言う。

○振幅調整

トレースの平均的な振幅レベルが,ある時間ゲート内で一定になるようにする処理。この処理では1トレース内での時間方向の振幅レベルが揃うだけではなく,トレース同士の振幅レベルも揃う事になる。

図3−4−9 データ処理の流れ

○速度フィルター

原波形に含まれるノイズのうち波動によるもの,例えば表面波・音波・S波等の波は,一般に信号波と周波数帯域が一部重複することが多く,周波数の違いに着目して行うバンドパスフィルターだけでは除去しきれない場合がある。しかし,見掛の速度には差がある場合が多いので,この違いに着目してノイズを除去するフィルターのことをいう。

○デコンボリュ−ション

振源から出たパルス状の弾性波は,地層や観測システムのフィルタ−作用によって歪められ,分解能の悪い波形となる。これを元のシャ−プな波形に戻す処理である。また,多重反射等の周期性のある成分の除去も行う。この処理はCDP重合前のデータに適用する場合と重合後のデータに適用する場合(または,両方)がある。どのように適用するかは,実際のデータでテストして,調査ごとに決定する。

○CDP ソ−ト

CDP重合を行うために,発振毎にまとまっているトレ−スを,共通反射点(CDP)をもつトレ−ス毎に並べ直す。

○静補正

陸上での反射法探査の場合,地表の標高差や表層(風化層)での弾性波伝搬速度の変化等により反射波の走時が乱れる。また,表層での弾性波伝搬速度は一般に遅く,そのために走時の乱れの量も大きくなる。この影響を除去するために,地形や表層の速度および標高などを考慮して,基準面を設け計算を行う。この影響を除去する補正処理を静補正という。

通常の反射法探査の場合,適当なオフセットの範囲で表層の基底層に沿って伝搬してきた屈折波がフィールドデータに含まれているので,これを用いて表層構造を解析して静補正を行うことができる。

○速度解析,NMO 補正,CDP重合

共通反射点の各トレースを0オフセット点(共通反射点の直上)でのトレースに変換する(NMO補正)ために,速度解析を行うことで重合速度を得る。NMO補正によって得られた各トレースを足しあわせること(CDP重合)によってS/N比を向上させ反射面を強調させることが出来る。

○ミュ−ト

大きな角度で反射してきた波は鉛直方向の見かけ速度が大きいため分解能が悪く,これは動補正後,波形の間延びとなってあらわれる。このままでは重合記録の分解能が低下するので,間延びの激しい部分をカットすることを行う。また,より広い意味でトレース全体ではなく品質の悪い部分のみカットすることもミュートという。

○マイグレーション

重合断面は,簡単に表現すると,生データのNMO補正したものを加算操作して作った断面と言える。先にも述べたようにNMO補正したデータというのは発振点と受振点とが同じ地点となっているデータである。実際に,ある地点で発信した弾性波が反射して同じ地点に戻ってくるには反射面に対して垂直に入反射する必要がある。

逆に考えると反射面に垂直に入反射した波は,全て記録されることになる。これを図3−4−10(a)に模式的に示す。このような場合,測定点Rには,反射点M,およびNからの反射波が記録される。簡単のために反射面と地表との間の層の弾性波伝搬速度が一定(Vとする)とする。その時,R−MとR−Nの距離が同じ(Lとする)場合,どちらの反射点からの反射波も2×L/Vの走時で記録される。つまり,この走時の記録は,どちらの反射点からの反射波なのかが解らないことになる。

これを,地表面に垂直に入射したような走時,測定点に移す処理をマイグレーションという。マイグレーションを適用した後の状態を図3−4−10(b)に示す。水平な反射面にある反射点Mからの反射波は,そのままである。傾斜した反射面にある反射点Nからの反射波は,反射点Nの直上の地表にある測定点Sに移動する。さらに,S−Nの距離をHとすると,走時も2×H/Vに変わる。また,マイグレーション後の記録は,測定点の真下の状態を記録したものとなっている。

マイグレーションのオペレータは,反射面の傾斜に応じて,それを適切な位置に移す作用を持っているので,反射面の傾斜については事前に情報を得ている必要はない。ただし,弾性波の伝搬速度については予め推定しておく必要がある。通常,速度解析の結果を用いることが多い。

○深度変換

時間断面図の縦軸を時間から深度へ変換する処理。適切に行うためには,かなり正確な速度関数を用いる必要がある。