(1)データ処理の基本的な考え方としての「CDP重合」法

地下から戻ってくる反射波はかなり微弱である。また,地表に沿って伝播する直接波や表面波,地層境界面に沿って伝播してくる屈折波などのノイズ波の中に埋もれてしまうことも多い。

このためS/N比を向上させ,この微弱な反射波を抽出するための基本的かつ代表的なデータ処理方法が,前述のマルチチャンネル測定法で取得したデ−タを用いる「CDP重合」法である。以下では,CDP重合に至るまでのデ−タ処理について述べる。

1つのCDPに属するトレースデータは,3.4.1項で示した図3−4−2に示した測定パターンで取得される。CDP重合とは,このトレースデータの反射波を重ねて一つにまとめて強調する処理のことである。しかし,このままでは同じ反射面からの反射波でも,オフセット距離が違うために,その走時が異なっており(波線の伝搬距離が違うのが図より解る),重ね合わすことができない。そのために,この12通りの反射波を全てオフセット距離が0m, すなわち発振点と受振点が同一でCDPの真上にある時の反射波の走時に補正しておく必要がある。ここで,オフセット距離とは発振点と受振点との間の距離を指す。

図3−4−8においてオフセット距離”X”での反射波の往復時間(走時)Txは、次式で表される双曲線になり、Xが大きくなるほどTxも大きくなる。

  Tx=To+(X/V)

ここに To:オフセット距離0mにおける反射波の往復時間

V :反射面までの平均速度

ここでいろいろな速度を与え,最も重合効果が高い,すなわち反射波の並びに最も適合するような双曲線の式を求めることが,To とVを求めることになる。このデ−タ処理を速度解析という。この時の速度は重合速度と呼ばれ,この速度値から概略の反射面区間速度を求めることができる。

また、図3−4−8において各トレ−スから時間補正量△Tx=Tx−To(この量をノーマルムーブアウト、略してNMOと言う)を差し引けば,右下がりの反射波列は全て時間To まで持ち上がり,横一線に並ぶ。この処理をNMO補正(動補正)という。

この後,時間(走時)の揃った反射波を加え合わせることによって,反射波を強調して表現することができる。この処理をCDP重合(あるいは水平重合)という。1つのCDPで加え合わせられるトレースの数を重合数と言う。この重合数は測定システムのチャンネル数,及び発振点間隔と受振点間隔との関係により決まる。

以上の処理は表面波や重複反射等のノイズを減ずる効果もあり,S/N 比の向上に果たす役割は大きい。

図3−4−8 CDP重合の流れ