(1)新期の活動時期

第二トレンチの地質状況から,断層の新期の活動時期を3回判読した(図5−1−3)。また,本調査及び既往調査で得られた年代値と断層運動のイベントを整理し,図5−1−4にまとめた。第二トレンチの東側及び西側法面状況については,図5−1−5図5−1−6に示す。

1)最新の断層活動(イベント1)

トレンチ内における最新の活動(イベント1)は,東面において断層活動の影響を被る最上位の地層であるA−5層(腐植質シルト層2)堆積以降で,断層運動の影響を被らない最下位層であるB−1層(砂礫層2)堆積以前の時期と考えられる。両層の14C年代値はそれぞれ37,400年前後(T2E−5)と7,280年前後(T2W−3)であることから,トレンチ内で読みとれる最新活動時期は約37,400年前以降で約7,280年前以前であると言える(後述の総合評価におけるCase−1)。

但し,既往調査では根添西の断層露頭では,約13,800年の礫層が断層運動により変位していることが確認されており,仮に両露頭での最新活動が同一時期であるとするなら坪沼断層の最新活動時期は約14,000年前以降で約7,300年前以前の可能性があると言える。但し,根添西の断層活動が第二トレンチのイベント1と同時とは限らないため,上記の年代限定には不確実な部分がある。

なお,西面のB−1層最下部には薄い腐植質シルト層があって,その上位のB−1層主部とは不整合のようにも見え,A−4層以下の諸層と共に断層運動による引きずり変形に参加しているとも解釈できる。したがって,西面でのイベント1層準は,このB−1層最下部の腐植質シルト層の上面とみなすこともでき,その時期は7,280年前(西面のB−1層最下部の腐植質シルト層の年代)以降で,6,750年前(B−2層の信頼できる最古の年代)以前ということになる(後述の総合評価によるCase−2)。

2)1回前の断層活動(イベント2)

下盤側に分布するA−2層には,同層起源の砂層・シルト層がブロック状に上盤側から崩落した層相を呈し,イベント堆積物と見なせる。また,A−2層の鉛直変位量(1.1〜1.2m)および層理面の傾斜角(鉛直〜逆転)は,上位のA−4層, A−5層(鉛直変位:0.7〜0.9m,傾斜角:10°~30°)などより大きい。従って,A−2層はA−4層より累積的に断層活動の影響を被っていると考えられる。一方,A−3層は分布が断層下盤に限られることから,A−2層が変位した後の凹地に埋積した腐植土層と考えられる。上記からイベント2は,A−2層堆積以降(約44,600年前以降:T2W−1)でA−3層堆積以前(約44,300年前以前:T2E−1)の時期と考えられる。

3)2回前の断層活動(イベント3)

ボーリング(B−4孔)データによると,断層を挟んだ基盤岩(高舘層)上限面の鉛直変位は,約2.2mである。これは前述したA−2層の鉛直変位量(1.1〜1.2m)より大きく,基盤上限面が累積的に断層活動の影響を被っていると見なされる。高舘層を直接覆う砂礫層1の厚さが,断層の両側で異なることから,断層活動は砂礫層1の堆積直前か砂礫層1堆積中の可能性が考えられる(図5−1−3)。