2−1−2 反射法地震探査

(1)共通反射点(CDP)重合法

共通反射点重合法の概念図を 図1−4に示す。測線上に一定間隔(測線1では10m間隔、測線2・3は4m間隔)に受振点を設け受振器を設置し、測線上の一点で発震して多数の受振点で反射波を同時観測する。この時同時受振する受振点数をチャネル数と呼ぶ(概念図中では12チャネルとしているが、本調査では160〜240チャネルである)。次に、発震点と受振点全体を同距離(本調査では測線1で標準20m、測線2・3で標準8m)だけ移動し、発震を行い記録を取得する。この様に発震/受振を規則的に繰り返すことにより、地下の同一の点(共通反射点(CDP))で反射したデータが2重、3重に取られる事になる。このデータに種々の補正処理を行い、足し合わせる(重合)ことにより、測線上の各CDP位置の直下の地下反射波が強調される。足し合わせるデータの数を重合数と呼ぶ(概念図中では3重合、本調査では測線1で標準60重合である)。

 また、各CDPを構成するデータの補正処理を行う時、各反射面までの反射波の速度情報も得ることができる。

(2)反射法地震探査の原理

地表の震源から発生した波は、地層中を伝わり、地層境界面で反射して再び地表へ戻る。これを記録して、反射波の到達時間と振幅を処理/解析することにより、地下の速度構造と地質構造形態(幾層もの地層の重なり具合)を明らかにするのが反射法の原理である。

 図3−3 に反射法の作業概念図を示した。図の上部に調査の概念図を示した。図の下部に示したように、反射法の結果は、測線上の多数の共通反射点の直下の反射波の振幅を、測線に沿って一定間隔に並べて表示される(反射断面図)。このことにより、地下の地層境界面の形状が反射波の並びとして表現され、地下地質構造形態が理解できる。

 また、反射波の振幅は、地層境界面での速度の差が大きいほど大きくなるので、反射断面図上の反射面の振幅をから、地層の性質についてもある程度推定できる。

(3)バイブロサイス波形処理法

都市部/市街地において、深度数kmまでの深部を対象とした反射法地震探査の震源としては、大型のバイブロサイスが最適である。

 バイブロサイス波形処理の概念図を 図3−4 に示した。震源からは、(A)に示す様な周波数が徐々に変化する長時間の振動(スイープ)を発生させる。地下の反射面として(B)に示す5層を仮定すると、各反射面からの反射波は、それぞれ (C)〜(G)の波形となる。地表の受振器での観測波形は、これら (C)〜(G) 全ての重ね合わせとなり、(H)に示す様な波形となる。この波形から (B) を推定するのは困難である。

 バイブロサイス波形処理とは、(H) の波形に対して、震源からある瞬間にパルスが生成された時の波形に変換する処理である。この処理は、スイープ波形 (A) を用いて行い、クロスコリレーションと呼ばれる。この結果を図中の最下部に示す。(B)で仮定した5層の反射波が明瞭に確認できる。

 本調査では、

 スイープ周波数:10〜80 Hz

 スイープ長  :  16 秒

を用いており、これらの波形処理は、現地調査の記録計(探鉱機)で行われている。

 この波形処理によれば、都市部での種々のノイズ(車両交通・土木工事等)に対して、削減効果がある程度期待できる。このことが、バイブロサイス震源が都市部・市街地で有効である理由の一つである。

 なお、本調査では、後に説明するデコンボリューションの結果をよりパルスに近い波形にするために、データ記録時に最小位相変換という操作を施した。

(4)油圧インパクター震源

 測線2と測線3では、交通量が少ないためにノイズが少なく、かつ道幅の狭い道路が多いためより小型の震源である油圧インパクターを用いた。

 油圧インパクターはパルス状の波を発生するため、バイブロサイスのような波形処理はデータ記録時には必要ない。