(3)ボーリング孔間の地層対比

断層の活動履歴を明らかにするには,変位がどの面にまで及んでいるかを把握する必要がある。仮に変位を示す断層が存在したとすると,最新活動時期を求めるためにはどの面まで変位が及んでいるかを知ることが必要である。露頭であれば,この変位を比較的容易に把握できるが,ボーリング調査においてこの変位を把握するためには,複数のボーリング間でどの地層どうしが連続し同一時間面にあるかを明らかにすることが必要であり,同一面のずれの違いから断層の変位が明らかになる。ただし,腐植土等の地層が良く連続する場合もあれば,堆積物の供給源となる河川の蛇行等の影響で,同一面に腐植土等の同一の堆積物が連続しない場合もある。

ここでは,No.1孔とNo.2孔に見られる主な地層の対比を行った。図3−3−3−1図3−3−3−2図3−3−3−3に地層対比の結果を示す。以下に,対比される層の特徴について各地層毎に記述する。

@大年寺層

青葉山段丘礫層との境界面(不整合面)が同一面である。ここに見られる大年寺層は,No.1孔とNo.2孔共に3〜10゚程度傾斜した葉理を持つ石英粒子主体の中〜粗粒砂岩である。

A青葉山段丘堆積物

No.1孔の43.55〜43.81mとNo.2孔の40.20〜40.97mに,同一層準と考えられる赤橙色細砂及び黄灰色火山灰質シルト・砂が見られる。

No.1孔の34.85〜35.30mのシルトは,No.2孔の33.95〜34.08mに見られるシルトの層準に相当すると考えられる。その下はNo.2孔では砂礫であるが,No.1孔では40.00mまでシルト・腐植土・砂が堆積している。

B台の原段丘堆積物

愛島軽石が同一面である。その上位に,No.1孔及びNo.2孔共に愛島軽石の二次堆積物を含む砂・粘土が堆積している。

C仙台上町段丘堆積物・仙台中町段丘堆積物

No.1孔の19.80m〜20.16mに見られる砂礫は,その上位の砂礫より硬質で良く締まっている。また,No.2孔の12.10〜16.35mにも同様の硬質で良く締まった砂礫が見られ,これらは同一の地層と考えられる。No.1孔で砂礫の厚さが薄いのは,河川の蛇行等によりNo.1孔の砂礫が削剥され,その後この凹部に堆積物が埋積したためと考えられる。

No.1孔の14.20〜15.30mとNo.2孔の10.80〜11.70mの砂礫層は,共に仙台中町段丘基底礫層と考えられ,その上面は上位層との境界が比較的明瞭あるが,下面の境界はやや不明瞭である。一方,No.2孔の8.85〜 9.00mの14C年代測定結果(40,900y.B.P)から,No.2孔で中町段丘としている堆積物は上町段丘に含まれる可能性がある。いずれにしても上町段丘中の不整合面にそれより上位の地層がアバットしているのか,あるいは層厚変化してNo.2孔の堆積物に対比されるのかについては,今後2孔間付近で稠密ボーリングを実施することにより,この部分の14C年代測定を密に行うなどして明らかにする必要がある。 

D沖積層

No.1孔の10.55mとNo.2孔の8.25mが同一面で,沖積層の下面であると考えられる。また,No.1孔の9.45mとNo.2孔の7.50mの砂礫層から細粒な地層に変化する境界面が同一面と考えられる。

No.1孔の2.3m以浅,No.2孔の1.3m以浅では,シルト中に軽石粒子・石英粒子を含み淘汰が悪く風化土壌のように見えるが,それ以深では淘汰良好である。このような淘汰の違いの境面界も,同一面を示すと考えられる。

なお,No.1孔の6.20〜6.40m付近及びNo.2孔の5.00〜5.20m付近に乱れた堆積構造を持つ層が見られるが,上下の地層との関係からこれらは同一層準と考えられる。