(2)断層沿いの地質状況(各説)

1)北部地域

1−1)三畳系利府層(Rf)

@分布状況:利府町放森南東方の砕石場周辺にやや広く分布する。その他に県道沿いの低地に沿って北東−南西方向に分布する。

A層位関係:本層は、調査地における最下位層であり、新第三系の基盤を構成している。白亜紀の花崗岩類やひん岩に貫入され、下部中新統の松島湾層群、中〜上部中新統の志田層群及び鮮新統の亀岡層によって不整含に覆われる。本層からは三畳紀中期アニシック世〜ラディニック世を示すアンモナイト化石が知られている。

B岩相:本層は主として葉理の発達した暗灰色〜黒色の頁岩からなり、しばしば砂質頁岩や細粒砂岩を挟んでいる(写真2−44)。また、小規模なひん岩の岩脈を伴っている。岩質は一般に堅硬緻密で、砕石として採掘されている。利府町春日付近の本層は花崗岩類によって弱いホルンフェルス化を受けている。

C層厚:本層の層厚は500〜700mである。

1−2)花崗岩(G)

@分布伏況:県道沿いの極めて狭い地域に露出する岩体であり、利府町春日付近の2カ所でその分布が確認されている。

A層位関係:利府層中に貫入し、これを一部ホルンフェルス化させている。利府層と同様に中新統および鮮新統の基盤を構成している。

B岩相:暗灰色〜灰色の花崗閃緑岩〜石英閃緑岩である(写真2−45)。造岩鉱物は中粒〜粗粒であり、有色鉱物の大部分は角閃石である。本岩体のK−Ar年代値として124±4Maが報告されており(石井・柳沢1983;利府花崗岩類の岩石記載とK−Ar年代、地調月報vol.34,p.561−565)貫入年代は白亜紀前期である。

1−3)新第三系中新世松島湾層群

(1)塩釜層(Sh)

@分布伏況:県道以南の塩釜丘陵一帯に広く分布している。県道以北でも惣ノ関溜池下流部に小規模に分布している。

A層位関係:基盤岩類を不整合に覆う。利府砕石場では、基盤の利府層と急傾斜の不整合面をもって接している。

B岩相:本層は安山岩質凝灰角礫岩・火山円礫岩などを主体とし、火山礫凝灰岩や凝灰質シルト岩を伴う(写真2−46)。凝灰角礫岩は塊状無層理で淘汰が悪く、安山岩の角礫を主体としている。礫径はときに1m以上に達する。本層の比較的基底部付近にみられる角礫岩は、大部分が先第三系由来の砂岩、頁岩、ひん岩等の礫からなっている。基質は安山岩質凝灰岩からなり、雑色を呈する安山岩質岩片を多量に含んでいる。本層は全体に強く風化し、地表に近い部分では赤褐色を呈しており、礫はクサリ礫になっている。

C層厚:本層の層厚は200〜250mである。

(2)佐浦町層(Su)

@分布状況:本層は利府町春日付近と、松島町姉取山南方にごく小規模に分布する。

A層序関係:本層は塩釜市佐浦町付近で、塩釜層を整合的に覆うとされているが、調査地内での詳細は不明である。

B岩相:本層は火山礫凝灰岩・凝灰質シルト岩の互層を主体とし、軽石凝灰岩や凝灰質砂岩を挟む(写真2−47−1写真2−47−2写真2−47−3)。全体に暗褐色を呈し、発泡の悪い軽石片や赤褐色の安山岩岩片を多く含む。岩相の側方変化が激しく、連続性に乏しい。本層は全体に風化を被っており、利府町春日付近では赤褐色〜茶褐色を呈し、細かいひび割れがみられる。

C層厚:本層の層厚は200〜250mである。

(3)松島層(Mt)

@分布状況:松島町姉取山から東北線松島駅を経て、高城付近まで分布する。

A層位関係:下位の網尻層を整合的に覆うとされているが、調査地内では確認すできない。また、松島町初原付近では、志田層群の地層に覆われている。

B岩相:本層は塊状の軽石凝灰岩や凝灰角礫岩を主体としている(写真2−48−1写真2−48−2)。径4〜5cmの発泡の良い軽石を多く含むほか、石英安山岩や基盤岩由来の堆積岩類の角礫も混じっている。希にシルト岩偽礫(最大径で1m)を含む。

C層厚:本層の層厚は350〜400mである。

1−4)新第三系中新世志田層群の地層

(1)幡谷層(Hy1〜Hy4)

@分布状況:本層の下半部(Hy1〜Hy2)は、松島町白坂山周辺を中心とし、初原付近から湯ノ原温泉、桜渡戸一帯に広く分布している。本層上半部(Hy3〜Hy4)は、放森周辺の沢沿いや惣ノ関溜池及び利府町菅谷の運動公園付近において番ヶ森山背斜の軸部に沿った内座層として散在している。

A層位関係:松島町初原から城内・湯ノ原にかけて、下位の松島層を不整合で覆っているが、番ヶ森山背斜沿いの地域での下位層との関係は不明である。

B岩相:本層はHy1からHy4に4区分することができる。最下部(Hy1)は凝灰質粗粒〜極粗粒砂岩からなり、細かい葉理が発達している。全体に径5〜10mmの円磨された軽石粒や火山礫を多く含み、初原付近では所々に海性貝殻片を多く含む(写真2−49−1写真2−49−2写真2−49−3)。白坂山凝灰岩(Hy2)は、塊状無層理の淡灰色軽石凝灰岩を主体とし、上部に白色のミガキズナ状の細粒凝灰岩を伴っている(写真2−50−1写真2−50−2)。軽石凝灰岩には径4〜5cm(最大30cm)の発泡の良い軽石を多量に含んでいる。白坂山凝灰岩は、石井ほか(1983)で述べているとおり、白坂山周辺で層厚が最大で、周辺に向かって漸次薄くなると推定される。乱堆積岩相(Hy3)は、シルト岩・凝灰質砂岩・軽石凝灰岩などの不規則な互層からなり、しばしば泥管や砂管が認められる(写真2−51)。放森周辺では乱堆積構造が特に顕著で、ブロック状したシルト岩と凝灰質砂岩が不規則に混在する。なお、惣ノ関溜池及び運動公園周辺では、乱堆積構造はあまり頭著でなく、地層の側方への連続性は比較的良好である。本層の最上部をなす凝灰質砂岩相(Hy4)は、塊状の軽石質中〜粗粒砂岩を主体とし、火山礫凝灰岩及び軽石凝灰岩を挟む。軽石質砂岩は径1〜3cmの白色軽石やときに火山礫を含む灰色の中〜粗粒砂岩からなり、弱い層理が認められる(写真2−52)。なお、惣ノ関溜池及び運動公園周辺の本層は、従来、北村ほか(1983)により入菅谷層と呼ばれていたものであるが、層位学的に番ヶ森山層の下位に位置すること、また岩相的特徴より幡谷層の上半部(Hy3〜Hy4)に対比されることから、今回は幡谷層として一括した。

C層厚:本層の層厚は約180mである。

(2)番ヶ森山層(Bn)

@分布状況:松島チサンゴルフ場から番ヶ森山、利府ゴルフ場を経て、仙台市県民の森までの県道以北の富谷丘陵一帯に広く分布している。

A層位関係:幡谷層を不整合で覆うとされている。両層の地質構造は互いに調和的であり、広い範囲でほぼ同層準の地層と接している。他方、本層は惣ノ関溜池付近では塩釜層を、放森一帯では基盤の利府層を傾斜不整合で覆っている。これは、海水準面変動伴うオンラップ現象であろう。

B岩相:大規模な斜交葉理が顕著に発達した軽石質中〜粗粒砂岩からなる(写真2−53−1写真2−53−2写真2−53−3)。全体に中〜粗粒の石英粒や黒色岩片の細礫に富む。径2〜10cmの軽石を多く含み、しばしば軽石の密集層が細かい葉理に沿って、あるいはレンズ状に挟まれている。放森一帯の本層基底部には、安山岩や利府層由来の頁岩礫を多量に含む礫岩を頻繁に挟んでいる。放森向斜以南では斜交葉理は不明瞭となり、淘汰の悪い亜角礫岩を伴う、塊状の中〜粗粒砂岩に変化している。石井ほか(1982)は、放森付近に分布するこの砂岩層を放森層とよび、鮮新世に対比した。しかし、放森付近の砂岩からは中新世中期を示す海成貝化石群集(表2−3)を産すること、幡谷層を不整合に覆うことなどを考慮して、従来放森層とされたものの一部は番ヶ森山層に対比するのが妥当である判断し、本報告では放森付近に分布する砂岩を番ヶ森山層に含めた。

C層厚:本層の層厚は100〜180mである。

(3)七北田層(Nkl,Nku)

@分布状況:本層の分布は、県民の森付近の七北田川左岸側の丘陵一帯に広く分布し、その北方延長は放森向斜の軸部に沿つて利府町管谷から森郷を経て、瓦焼場付近まで分布している。

A層位関係:番ヶ森山層を整合的に覆っている。

B岩相:本層は、下部(Nn1)と上部(Nnu)に区分することができる。下部(Nkl)は主に凝灰質細〜中粒砂岩、軽石凝灰岩からなる(写真2−54−1写真2−54−2)。本層下部の砂岩は一般に塊状であるが、所により小規模な斜交葉理がみられる。全体に軽石質で、しばしば生物撹乱の痕跡がみられる。最下部には層厚1〜2mの円礫岩層を伴うことが多い。この円礫岩層の連続性は良好で、利府町舘から県民の森まで追跡できる。円礫岩層の礫種は花崗岩類・頁岩及びひん岩などの礫から構成され、海成二枚貝化石を含む。本層上部(Nku)は細粒砂岩・凝灰質砂岩・火山礫凝灰岩・シルト岩の互層からなり、全体に黄褐色の発泡の悪い軽石片や褐色の安山岩片を多く含んでいる。細粒砂岩には生物撹乱の痕跡(泥管)が認められる。

C層厚:本層の層厚は100〜200mである。

1−5)鮮新統

(1)亀岡層(Km)

@分布状況:利府町赤沼から仙台市宮城野区岩切にかけて、県道付近の低地に分布する基盤岩類や、塩釜層の凹部を埋めて点々と分布する。

A層位関係:下位の基盤岩類や中新統を不整合で覆っている。

B岩相:岩相は主に低固結礫岩・砂岩・シルト岩及び軽石凝灰岩などの不規則な互層からなる(写真2−55−1写真2−55−2写真2−55−3)。各岩相の連続性は極めて悪い。シルト岩は木片や炭質物を多く含み、所々亜炭質となっている。風化部は粘士化し、きわめて軟質である。砂岩は中〜粗粒の石英粒からなり、ル−ズで小規模な斜交葉理がみられることがある。礫岩は利府層の頁岩や塩釜層の安山岩などの円〜亜円礫を含み、基質は石英に富むシルト質砂岩からなる。本層からは植物化石やカキ殻、ヤマトシジミ(Corbicula.Sp.)などの淡水性〜汽水性貝化石を産する

 本層は従来、石井ほか(1982)では放森層の一部に、北村ほか(1986)では亀岡層とされていたが、放森層の大部分が中新世の番ヶ森山層に対比されることが判明したため、これを除く汽水性のル−ズな砂岩・礫岩・シルト岩互層を区別して亀岡層の名称を用いた。

C層厚:本層の層厚は30m以上である。

2)中部地域

2−1)新第三系中新統

(1)高舘層・安山岩類(Tk)

@分布状況:高舘丘陵一帯及び名取川河岸に分布。

A層序関係:調査地内では槻木層を不整合に覆う。

B岩相:板伏節理を持つ硬質安山岩・玄武岩及び凝灰角礫岩よりなる(写真2−56写真2−57)。

C層厚:本層の層厚は広域地質研究報告(1986)によれば250mである。。

(2)茂庭層(Mn)

@分布状況:茂庭浄水場から人来田にかけての名取川河岸。高舘熊野堂付近の丘陵脚部及び名取川左岸に分布する。また仙台市太白区今成から中沢にかけて、高舘層上面の凹部を埋めるように分布する。

A層序関係:調査地内では高舘層を不整合に覆う。

B岩相:凝灰岩、礫岩、砂岩よりなる。今成においては、高舘層の安山岩を巨礫岩層が不整合に覆っており、その礫岩層の上位に挟在する凝灰岩中から、Kotrapecten kagamiensisなどの貝化石が豊富に産出する。その他茂庭浄水場、赤石橋付近の細礫岩層中からも貝化石が豊富に産出する。

C層厚:本層の層厚は20〜80mである。

(3)旗立層(Ht)

@分布状況:太白山を中心として、坂ノ下周辺、日本平団地、太白団地及び佐保山に広く分布する。

A層序関係:茂庭層を整合に覆う。

B岩相:塊状の凝灰質シルト岩、砂混り凝灰質シルト及び細粒凝灰岩、細粒砂岩よりなる(写真2−58)。生痕化石を含む。基底部付近では細礫を含むところがある。

C層厚:本層の層厚は180〜200mである。名取川沿いの河床では、本層と後述する綱木層を合わせた層厚は約460mである。

(4)綱木層(Tn)

@分布状況:綱木から青葉山ゴルフ場南西方、八木山南方の養護学校付近を経て、鈎取付近まで分布する。北東に20゜〜50゜のやや急な傾斜を示す。

A層序関係:旗立層を整合に覆い、梨野層及び鮮新統に不整合に覆われる。

B岩相:砂岩、凝灰岩、火山礫凝灰岩、凝灰角礫岩、軽石凝灰岩、礫岩よりなる(写真2−59)。中部の礫岩薄層にはコキナ状のフジツボ・貝殻層を挟む。火山礫凝灰岩は広範囲に連続して分布しており、良い鍵層となる。軽石凝灰岩に含まれる軽石には高発泡性のものがみられる。

C層厚:本層の層厚は400mである。

(5)梨野層(Ns)

@分布状況:青葉区荒巻の澱橋上流の広瀬川河岸にみられる。

A層序関係:綱木層を不整合に覆っている。なお、調査地周辺では旗立層、茂庭層、高舘層を不整合に覆っている。

B岩相:含礫軽石凝灰岩、砂質凝灰岩よりなり、しばしばスランプ状の構造を示す(写真2−60)。下位層とは、明瞭な傾斜不整合面をもって接する。

C層厚:調査地域内での本層の層厚は20m程度である。

(6)三滝層(Mta)

@分布状況:調査地内では、大崎八幡周辺、三居沢周辺に分布する。

A層序関係:調査地周辺の西風蕃山南西側では梨野層と指交関係にある。

B岩相:主に安山岩〜玄武岩の溶岩、火山角礫岩及び火山礫凝灰岩からなる(写真2−61)。

C層厚:本層の層厚は200m以上である。

2−2)新第三系鮮新統

(1)亀岡層(Km)

@分布状況:亀岡八幡宮下の広瀬川河岸、上谷刈、黒松、旭ヶ丘、枡江、燕沢付近及び荒巻浄水場付近に分布する。

A層序関係:調査地内では、七北田層及び三滝層を不整合に覆っている。調査地周辺では、長命が丘付近で白沢層を不整合に覆っている。また、八木山南で綱木層及び梨野層を不整合に覆っている。名取川頭取工下流の河床では綱木層を不整合に覆っている。

B岩相:名取川においては、斜交葉理の発達した粗粒砂岩を主体とし、粗粒の石英粒子を多含する(写真2−62)。凝灰岩、シルト岩及び亜炭の薄層を含む。

C層厚:本層の層厚は梨野付近で数m、広瀬川の牛越橋付近で約13m、八木山南(鈎取−奥武士線付近)で20m弱、桜ヶ丘付近で40m程度である。市街地中心部付近のボーリング資料(地質調査所、1968)によると、本層の層厚は30〜40mと想定される。本地域の南端部の名取川頭取工下流の河床露頭では、層厚は約10mとなっている。本層の層厚は、名取川付近を除くと全体として山側から海側に向かって厚くなる傾向がある。

(2)竜の口層(Tt)

@分布状況:竜の口渓谷の崖に模式的に分布する他、輪王寺、台の原森林公園及び小松島周辺に分布する。調査地内では、宮城野区大梶付近の藤川及び梅田川の河床、青葉山北東の広瀬川河岸、西多賀付近の笊川、名取川頭取工下流の河床に分布する。

A層序関係:亀岡層を整合に覆う。

B岩相:シルト岩、砂岩、凝灰岩よりなる(写真2−63)。シルト岩は新鮮部では青灰色を呈するが、風化部では黄灰色を呈し、黄色の粉を吹くことが多い。砂岩はシルト岩と互層をなすことが多い。凝灰岩は所によって軽石に富むことがある。竜の口渓谷においては貝化石層がみられる。

C層厚:本層の層厚は竜の口渓谷で40m程度、愛宕橋〜宮沢橋間の地下鉄工事区間で50m以上、大年寺山付近で50m以上、桜ヶ丘付近では75m程度である。市街地中心部付近のボーリング資料(地質調査所、1968)によると、本層の層厚は60〜80mと想定される。名取川頭取工下流の河床では約25mとなっている。本層の層厚は、名取川付近を除くと亀岡層と同様に全体として山側から海側に向かって厚くなる傾向がある。

(3)向山層(Mk)・広瀬川凝灰岩部層(Mkt)

@分布状況:広瀬川河岸、竜の口渓谷、八木山、二つ沢及び名取川頭取工下流に分布する。

A層序関係:竜の口層を不整合に覆う。

B岩相:向山層主部は、礫岩砂岩、凝灰質シルト岩、亜炭、細粒凝灰岩、軽石凝灰岩等よりなり、中部には厚さ10mの軽石質凝灰岩(広瀬川凝灰岩部層:Mkt )が挟在する。礫岩は基底に発達し、安山岩、シルト岩の円礫よりなる。広瀬川凝灰岩部層は軽石流として堆積したもので塊状の軽石凝灰岩である(写真2−64−1写真2−64−2)。軽石は粗髭で、所々に天然木炭を含む。

C層厚:本層の層厚は、西公園付近の広瀬川沿いで40m以上、愛宕橋〜宮沢橋間の地下鉄工事区間で約65m、大年寺山付近で約50mである。青葉山でのボーリング資料(地質調査所、1968)によると、本層の層厚は80m以上と想定される。名取川頭取工下流の河床では約17mとなっている。

 広瀬川凝灰岩部層の層厚は、泉区実沢南方及び南西方の一部では12m余り、仙台市上愛子北方の広瀬川沿いでは14〜15mと厚くなっている。名取川頭取工下流の河床では約9mとなっている。

(4)大年寺層(Dn)

@分布状況:調査地周辺では、宮城町塩ノ沢から芋沢にかけての一帯と権現森一帯では、広範囲にわたって三滝層に直接アバットして分布する。また、樽水ダム東方では高舘層にアバットして分布する。調査地内では、向山から門前町にかけての大年寺山北東側及び南西側に分布する。また、青葉山周辺にも分布する。

A層序関係:下位の向山層をほぼ整合で覆う。

B岩相:下部は砂岩を主体とし、上部はシルト岩が優勢なシルト岩・砂岩の互層よりなる(写真2−65写真2−66)。シルト岩中には貝化石・植物化石がみられる。

C層厚:本層の層厚は大年寺山付近で90m以上、愛宕橋〜宮沢橋間の地下鉄工事区間で100m以上、名取川頭取工下流の河床で65m以上である。広瀬川に沿う地質断面図(大槻ほか、1977)によると、本層の厚さは140m以上と想定される。本層の層厚は、全体として山側から海側に向かって厚くなっている。

3)南部地域

3−1)新第三系中新統

(1)槻木層(Ts)

@分布状況: 坪沼川に合流する付近の支倉川沿い、愛宕山南側、村田町道海付近から川崎町支倉大石田付近にかけての川沿いに分布する他、村田町菅生周辺の谷底平野周辺に広く分布する。

A層序関係:上位の高舘層には不整合に覆われる。下位層との層序関係は露出がないため不明である。

B岩相:支倉川においては、下位より安山岩角礫混り軽石質凝灰岩、シルト岩よりなる(写真2−69−1写真2−69−2)。安山岩角礫混り軽石凝灰岩に含まれる安山岩礫は硬質で、径30cm程度のものまで含まれる。基質の軽石は高発泡である。シルト岩は硬質で、新鮮部は青灰色であるが、風化部は暗褐色を呈し、乾燥するとひび割れを生じる。暗灰色スコリア質凝灰岩は、径1〜2cmのスコリアの角礫よりなり基質は少ない。風化部は板状に剥離する。愛宕山南側では、安山岩角礫混り軽石質凝灰岩、シルト岩、暗灰色スコリア質凝灰岩、砂岩よりなる(写真2−70−1写真2−70−2)。安山岩角礫混り軽石質凝灰岩は、径20〜30cmの花崗岩の円礫を含む(写真2−71)。村田町道海付近から川崎町支倉字大石田付近に流れる川沿いでは、凝灰岩、安山岩角礫を含む凝灰岩、暗灰色スコリア質凝灰岩、シルト岩などからなる。村田町菅生周辺の谷底平野周辺では、径1〜3cmの安山岩角礫を含む暗灰色の硬質な凝灰岩が分布する(写真2−72)。この凝灰岩の上位には、層理面や葉理の発達する砂岩が分布する(写真2−73)。

C層厚:本層の層厚は50m以上である。

(2)高舘層

(2−1)安山岩類(Tk)

@分布状況:高舘丘陵一帯及び名取川河岸に分布。

A層序関係:調査地内では槻木層を不整合に覆う。

B岩相:板状節理を持つ硬質な安山岩質〜玄武岩質溶岩、流紋岩溶岩及び凝灰岩類よりなる(写真2−74)。川崎町櫛挽付近の流紋岩との境界付近では石英安山岩質である。

C層厚:高舘層の主体をなす安山岩類を含めて、本層全体の層厚は約250mである。

(2−2)流紋岩類(Tkr)

@分布状況:仙台市太白区坪沼愛宕山西方の支倉川沿い及び愛宕山南西方に分布する。高舘層をもたらした火山活動の初期に噴出したものと考えられる。

A岩相:本岩類は優白質で、繊維状組織、流理状構造及び球状空隙がみられ、石英粒子を含む(写真2−75)。

(2−3)酸性凝灰岩類(Tkt)

@分布状況:仙台市太白区坪沼において、坪沼川が丘陵地に流入する付近に分布する。

A層序関係:高舘層中に挟在する。

B岩相:本岩類は安山岩の角礫、軽石、石英粒子を含む凝灰岩で、泥岩の薄層を挟んでいる(写真2−76−1写真2−76−2)。これらの地層は、坪沼川沿いの断層付近で南東側に約60゜傾斜している。

(3)茂庭層(Mn)

@分布状況:碁石川右岸のミリア100ゴルフ場、支倉台、碁石南方にかけて、川崎町宮脇から音無にかけて広がる谷底平野南東の丘陵に広く分布する。また、仙台市太白区今成から中沢にかけて、高舘層の凹部を埋めるように分布する他、坪沼の根添付近に分布する。

A層序関係:調査地内では、高舘層を不整合に覆う。

B岩相:凝灰岩、礫岩、砂岩よりなる。今成及び中沢では、高舘層の安山岩を巨礫岩層が不整合に覆い、その上位に挟在する凝灰岩及び細礫岩層中からは、貝化石が豊富に産出する(写真2−77−1写真2−77−2写真2−78写真2−79)。その他茂庭浄水場、赤石橋付近の細礫岩層中からも貝化石が豊富に産出する。碁石南方及び宮脇から音無にかけての谷底平野周辺に分布する茂庭層は砂岩主体である(写真2−80)。宮脇周辺では礫質砂岩(石灰質で硬質になっている)が分布する。この砂岩は貝化石を含む。この礫質砂岩は、村田町無刀の関北西方に分布する茂庭層の基底部付近にも分布する。

C層厚:本層の層厚は20〜80mである。

3−2)新第三系鮮新統

(1)滑沢層(Nm)

@分布状況:滑沢付近に分布する。

A層序関係:下位の大森層(調査地内にはみられない)及び上位の桜内層と整合関係にある。

B岩相:青灰色〜暗褐灰色シルト岩を主体とする(写真2−81)。シルト岩は、全体としてやや凝灰質で、一部砂質な部分を含む。

C層厚:本層の層厚は20m程度である。

(2)桜内層(Sk)

@分布状況:村田町荒川の村田ダム下流域、支倉、末沢、宿付近及び滑沢から桜内にかけて分布する。

A層位関係:下位の滑沢層を整合に覆う。

B岩相:砂岩、泥岩、凝灰岩、軽石凝灰岩及び細粒凝灰岩の互層からなる(写真2−82)。音無付近では砂岩中に下位の茂庭層中の細礫岩と類似した礫岩層を頻繁に挟む。荒川流域の村田ダム下流から南西方では、軽石を少量含む暗灰色砂岩が厚く発達している。この砂岩には葉理が良く発達している。軽石凝灰岩の中には径20〜30cmの軽石を多量に含むものがある。また、凝灰岩の中には火山細礫を含むものがある。

C層厚:本層の層厚は70m程度である。

(3)北山火砕岩部層(Ky)

@分布状況:川崎町大石田北方に小分布する他、川崎町バリハイセンタ−周辺にやや広く分布する。

A層序関係: 桜内層と指交関係にある。

B岩相:安山岩・凝灰岩の角礫(径5〜30cm)を多量に含む凝灰角礫岩、軽石凝灰岩が境界不明瞭な互層をなす(写真2−83)。

C層厚:本層の層厚は50m以上である。

(4)小沢層(Oz)

@分布状況:川崎町みちのく杜の湖畔公園南東方から川崎町支倉字清水・音無を経て村田ダム周辺にかけて分布する。

A層序関係:調査地内では、下位の桜内層を整合に覆う。

B岩相:塊状で灰白色の細粒凝灰岩主体であるが、軽石凝灰岩の巨大なブロックを含む(写真2−84)。また、著しく不定形の凝灰質泥岩を乱堆積状に含む(写真2−85)。

C層厚:本層の層厚は40〜80mである。

(5)沼田層(Nt)

@分布状況:川崎町みちのく杜の湖畔公園南東の丘陵頂部付近、村田町足立付近の谷底平野周辺に分布する。

A層序関係:調査地内では、小沢凝灰岩を不整合に覆う。

B岩相:軽石凝灰岩主体で、含まれる軽石は発泡良好かつ粗髪であり、最大径10〜20cmの大きさのものまでみられる(写真2−86)。軽石凝灰岩は石英の巨斑晶を含む。村田ダム上流部では、軽石の大きさが径10〜20cmのものが卓越する。谷山温泉付近の荒川右岸側では、軽石の径が3〜5cmとやや小さくなる。

C層厚:本層の層厚は40〜50mである。

(6)音無層(Ot)

@分布状況:川崎町音無北方。

A層序関係:沼田凝灰岩及び小沢凝灰岩を不整合で覆う。

B岩相:音無付近では、下位より軟質な凝灰質シルト岩、亜炭層、火山豆石を含む凝灰質シルト、砂岩よりなる(写真2−87)。

C層厚:本層の層厚は10m程度である。

(7)薄木層(U)

@分布状況:川崎町みちのく杜の湖畔公園南東方から川崎町支倉清水、上音無周辺にかけての山頂部、村田町道海北西方、村田町足立、愛宕、元館周辺及び谷山温泉南西方に分布する。

A層序関係:音無層以下の地層を不整合で覆う。

B岩相:火山豆石を含む灰白質細粒凝灰岩、凝灰質砂岩、石英粒子に富む粗粒砂岩、礫岩、泥岩、シラス状の軽石凝灰岩よりなる(写真2−88−1写真2−88−2写真2−88−3 )。シラス状の軽石凝灰岩は、しばしば下位の地層の大きな凹部を埋めるように堆積している。

C層厚:本層の層厚は30〜50mである。