(3)段丘面の変形状況

段丘面が広く発達する中部地域では、長町−利府線、大年寺山断層の付近で断層による段丘面の変形が認められる。以下に、とくに変形の顕著なところについて記述する。

@榴ヶ岡における仙台上町段丘面の変位状況

 榴ヶ岡における仙台上町段丘面(標高32〜38m)の宮城野原平野側は、長町−利府線によって南東方向に撓曲し、低位崖をもって沖積面(標高17m)に接する。両面の高度差が15m程度になっている。

 上記の段丘面の北西側も、大年寺山断層によって北西方向に撓曲し、高度を減じている。断層を挟む仙台上町段丘面の高度差は5〜6m程度である。

 田山(1933)及び中川ら(1960)によれば、周囲より一段の高まりを持つ榴ヶ岡付近の段丘は台の原段丘とされていたが、大内(1973)は、段丘礫の風化殻の厚さを指標とする段丘の対比により、この段丘面を仙台上町段丘に対比している。

 今回の調査では、榴ヶ岡天満宮付近の公園内の露頭で、厚さ1m以上の段丘礫層(安山岩主体で花崗岩を含む)を確認している。この礫層は、台の原段丘の礫層よりもかなり新鮮である。また、大年寺山断層北西側の小田原付近の上町段丘で確認した厚さ1m以上の砂層は新鮮であり、その風化の程度は上記の天満宮付近の砂礫層とよく似ていることから、天満宮付近の砂礫層は仙台上町段丘の礫層に相当すると考えている。したがって、今回の調査では榴ヶ岡における大年寺山断層の変位量は、仙台上町段丘面を断層変位基準とする変位量とするのが妥当と考えられる。

A新寺付近における仙台中町段丘面Tの変位状況

 仙台中町段丘面T(標高20〜33m)の分布する仙台一高から二軒茶屋にかけての南東斜面は長町−利府線によって撓曲し、低位崖をもって宮城野原平野に接する(写真2−34写真2−35)。その斜面を横断する東北本線及び東北新幹線の高架掘削工事時に、竜の口層のシルト質砂岩が地表付近に分布していることが確認されている。この地質状況から判断して、長町−利府線の北西側で、竜の口層の分布高度が断層の南東側と比べてかなり高まっている可能性がある。

 五橋から東北本線の陸橋を経て新寺へ向かう北西下りの緩やかな坂道で、大年寺山断層による仙台中町段丘面Tの変位が認められる。中町段丘面Tの高度はこの断層位置を挟んで北西下りに標高34mから標高32mに変化している。

B大年寺山付近における青葉山段丘面の変位状況

 大年寺山の青葉山段丘面(標高100m前後)は、南東方向に撓曲し、著しく高度を減じている。茂ヶ崎住宅の北東に位置する切り割りで、青葉山段丘の礫層が撓曲により南東側へ約20゚傾斜しているのが確認された。大槻ほか(1977)によれば、この箇所における長町−利府線の変位量は、地表露頭及びボーリングデータをもとに、約250mであると見積もられている。

 大年寺山の青葉山段丘面は、その北西側が大年寺山断層群によって大きく変形し、北西側に高度を減じている。東北工大の北西側斜面で、大年寺山断層群のひとつである芦の口断層(Shibata、1962)の断層露頭が確認できた。この南東傾斜の逆断層により、青葉山段丘面は約15m、鮮新世の向山層では約30m、北西落ちで変位している。

C三神峯付近における台の原段丘面の変位状況

 三神峯公園の位置する面(標高約70m)と、東北大学核理研の位置する面(約55m)との高度差は約15mである。これは、大年寺山断層の変位によるものと考えられる。三神峯の北東側の浸食崖に大年寺山断層の派生断層がみられた。この断層は北東−南西の走向をもつ逆断層で、台の原段丘の礫層を約18cm変位させている。

D西多賀付近における仙台上町段丘面の変位状況

 この付近での仙台上町段丘面(標高20m前後)は長町−利府線によって撓曲している。西多賀の土手内より流下する川沿いの新しい露頭で、南東方向に約

10゚傾斜している仙台上町段丘の礫層を確認している。

E富田上野付近における上町段丘面の変位状況

 西多賀五丁目と富田上野間を流下する笊川河岸で、仙台上町段丘礫層が約20゚傾斜しているのが観察された。この付近では鮮新統竜の口層の露出が良く、礫層と同じ方向に20〜25゜のやや急な傾斜を示している。