(2)段丘面区分

中部地域では、七北田川、広瀬川及び名取川に沿って河岸段丘面が広く発達し、長町−利府断層、大年寺山断層及び鹿落坂断層の変位基準となっている。これらの段丘面は、青葉山段丘面(T〜W)、台の原段丘面、仙台上町段丘面、仙台中町段丘面(T〜U)及び仙台下町段丘面(T〜V)等に区分される。

以下に、それぞれの段丘面についてその地形・地質的特徴を述べる。

1)青葉山段丘面

 青葉山段丘面は、その分布高度等により、T〜Wまでの面に区分される。本段丘堆積物は礫を主体とし、砂のレンズを挟む(写真2−1)。さらに青葉山段丘T〜U面には粘土質火山灰・火山灰質粘土、坪沼第一軽石、坪沼降下岩片、坪沼第2〜4軽石が、また、青葉山段丘V〜W面には粘士質火山灰・火山灰質粘土が分布しているが、これらの火山灰のすべてを愛島火山灰が被覆している(写真2−2)。

なお、青葉山段丘面の形成年代は、関東地方における段丘面の形成年代うち、多摩期相当に対比されている(中田ほか、1976)。

以下に、青葉山段丘面T〜Wについて記述する。

(1)青葉山段丘面T

@分布位置及び標高:青葉台団地付近に分布する。分布標高は170〜200m程度である。

A段丘堆積物:青葉山段丘Tの堆積物は礫を主体とし、砂のレンズを挟む。これらは、粘土質火山灰・火山灰質粘土、坪沼第一軽石、坪沼降下岩片、坪沼第2〜4軽石及び愛島火山灰により被覆される(写真2−2)。

(2)青葉山段丘面U

@分布位置及び標高:青葉山ゴルフ場付近に分布する(写真2−3)。分布標高は170〜200m程度である。

A段丘堆積物:青葉山段丘U堆積物は礫を主体とし、砂のレンズを挟む。これらは、粘土質火山灰・火山灰質粘土、坪沼第一軽石、坪沼降下岩片、坪沼第2〜4軽石及び愛島火山灰により被覆される。

(3)青葉山段丘面V

@分布位置及び標高:東北大学青葉山校舎及び宮城教育大学付近に分布する(写真2−4−1)。分布標高は70〜160m程度である。本段丘面は大年寺山南東斜面において、撓曲により南東に約20゜傾斜している(写真2−1)。

A段丘堆積物:青葉山段丘V堆積物は礫を主体とし、砂のレンズを挟む。礫は著しく風化、軟質化しており、いわゆるくさり礫状を呈する(写真2−4−2)。これらは、粘土質火山灰・火山灰質粘土により被覆される。

(4)青葉山段丘面W

@分布位置及び標高:仙台城趾及び亀岡八幡宮付近に分布する(写真2−5)。分布標高は120m程度である。

A段丘堆積物:青葉山段丘W堆積物は礫を主体とし、砂のレンズを挟む。これらは粘土質火山灰・火山灰質粘士により被覆される。

2)台の原段丘面

@分布位置及び標高:台の原段丘面は、広瀬川の左岸では二の森、高松、東照宮、台の原、労災病院、青葉神社、輸王寺、東北福祉大学、大崎八幡宮、文殊堂付近に、広瀬川の右岸では瑞宝殿付近に分布する。また、名取川左岸では台の原段丘同位面が、土手内、三神峯、鈎取、山田団地、茂庭浄水場付近に分布する。

 二の森、高松、東照宮、台の原、労災病院、青葉神社、輪王寺、東北福祉大学、大崎八幡宮付近の面の分布高度は、標高70mから50mまでの範囲にあり、西方より東方にかけて高度が下がっている。また、二の森、高松、東照宮、台の原、労災病院にかけての面は、緩く北から南へ傾斜している。鈎取、山田団地、茂庭浄水場では、その分布高度は標高90mから50mまでの範囲にあり、西方より東方にかけて高度が下がっている。土手内及び三神峯では、その分布標高が南東から北西へ70mから50mに変化し、不連続な高度分布を示しているが、これは大年寺山断層の活動に起因するものと考えられる。

A段丘堆積物:本段丘堆積物は礫層、砂層及び粘土層よりなり、一部愛島火山灰により覆われる。東照宮境内において、台の原段丘の堆積物が観察された(写真2−6)。堆積物は礫層、砂層よりなり、これらは愛島火山灰によって覆われている。礫は安山岩を主体とし、流紋岩、砂岩、凝灰岩等を含む円礫よりなる。礫はほぼ中心部まで風化が進んでいる。土手内一丁目における露頭では、礫層及びそれを被覆する火山灰が観察された(写真2−7−1写真2−7−2写真2−7−3)。

台の原段丘の形成年代は、関東地方における段丘面の形成年代のうち、下末吉期相当に対比される(中田ほか、1976)。

3)仙台上町段丘面

@分布位置及び標高:仙台上町段丘面は、榴ヶ岡、宮城県庁、大学病院より北方に広く分布する(写真2−8)。その分布標高は30m(清水沼付近の梅田川沿い)から60m(柏木付近)である。仙台上町段丘同位面は、広瀬川右岸側に分布する川内亀岡住宅、東北大学川内校舎付近の面(分布標高50〜60m)及び西多賀、西の平、金剛沢付近の平坦面(分布標高30〜60m)である。

A段丘堆積物:本段丘の堆積物は礫層・砂層及び粘土層よりなる(写真2−9−1写真2−9−2写真2−9−3)。礫は安山岩、流紋岩、花崗岩よりなり、礫表面はやや風化している。

仙台上町段丘の形成年代は、関東地方における段丘面の形成年代のうち、武蔵野期相当に対比される(中田ほか、1976)。

4)仙台中町段丘面

 仙台中町段丘面は、榴ヶ岡、宮城県庁、大学病院り南方の仙台市街地に広く分布しており、その分布標高により、仙台中町段丘面T及び仙台中町段丘面Uに区分される。また、仙台中町段丘同位面は名取川沿いに分布する。

本段丘の堆積物は礫層、砂層及び粘土層よりなる。

仙台中町段丘の形成年代は、関東地方における段丘面の形成年代のうち立川期相当に対比される。

(1)仙台中町段丘面T

@分布位置及び標高:仙台中町段丘面は榴ヶ岡、宮城県庁、大学病院より南方の仙台市街地に分布する(写真2−10)。その分布標高は25〜55mである。また、仙台中町段丘同位面は、名取川沿いの山田、五反田、余方、人来田、生出に分布する。

A段丘堆積物:仙台中町段丘面Tの堆積物は、礫層、砂層及び粘土層よりなる(写真2−11)。

(2)仙台中町段丘面U

@分布位置及び標高:弓の町付近に狭小な範囲で分布する(写真2−12−1写真2−12−2)。その分布標高は20m程度である。

A段丘堆積物:仙台中町段丘面Uの堆積物は礫層、砂層及び粘土層よりなる。

5)仙台下町段丘面

仙台下町段丘面は広瀬川沿いに分布している段丘面で、分布高度からT〜V面に区分される。また、仙台下町段丘同位面は七北田川沿いにも分布する。本段丘の堆積物は礫層、砂層及び粘土層よりなる。

仙台下町段丘の形成年代は、関東地方における段丘面の形成年代のうち、有楽町期相当に対比される(中田ほか、1976)。

(1)仙台下町段丘面T

@分布位置及び標高:土樋、越路、仙台二高、仙台商高、スポ−ツセンタ一・国際センタ−、角五郎一丁目付近に分布する(写真2−13)。仙台下町段丘面Tの同位面は七北田川沿いに分布するほか、富沢南方の名取川沿いにも狭小に分布する。

A段丘堆積物:仙台下町段丘面Tの堆積物は礫層、砂層及び粘土層よりなる。

(2)仙台下町段丘面U

@分布位置及び標高:米ヶ袋二丁目付近、大手町、川内追廻、澱橋下流側及び角五郎二丁目付近等に分布する(写真2−14)。

A段丘堆積物:仙台下町段丘面Uの堆積物は礫層、砂層及び粘土層よりなる。

3)仙台下町段丘面V

@分布位置及び標高:米ヶ袋三丁目付近、霊屋下、花壇、川内川前町及び牛越橋下流側の広瀬川左岸沿いに分布する(写真2−15)。

A段丘堆積物:仙台下町段丘面Vの堆積物は、礫層、砂層及び粘士層よりなる。

6)沖積面

長町−利府断層よりも南東側に広大に広がる宮城野平野が沖積面に相当し、下町段丘V面より新しい面として区分される(中川ほか、1960)。

7)現氾濫原

広瀬川の現氾濫原は、三居沢の河原、中ノ瀬橋下の河原、評定河原運動場のある面で、現在の河面よりも2m前後標高の高い面である(写真2−13)。