2−4−2 トレンチ調査結果

田光地区では、平成13年度のボーリング調査とピット調査により、地層の高度分布の急変位置が把握されたので、西上がりの断層の通過位置が十分に限定できたと判断し、本年度は追加のボーリングを実施しなかった。トレンチは、L1面を開析する谷地形の谷底部(テラス状の水田の中央付近)で掘削した。地質断面を図2−18に示す。壁面スケッチ図・写真を図2−19図2−20に示す。トレンチで見られる地層・地質構造は以下のとおりである。

a  盛土(耕作土含む、黄褐色、花崗岩礫を含む)

b1 旧土壌層

b2 砂礫(チャネル堆積物)

b3 礫混じり砂(S面のみ観察される、b4層を覆う)

b4 有機質土(クロボク土主体の2次堆積物)

c  中砂(均質、間に薄いシルト層を挟み、固結している)

g1 砂礫(不均質な砂礫層)

g2 砂(g1層中にレンズ状に分布する)

各地層から採取した試料の14C年代値は表2−4のとおりとなる。

表2−4 田光トレンチ年代試料測定結果

本地点では、事前のボーリング調査によって、TBB−5〜TBB−8間に段丘堆積物層に有意な比高差が認められ、西上がりの断層が推定されていた。しかし、トレンチ内部には断層による明瞭な変位や変形構造は観察されず、段丘堆積物層上部(c層)にみられる比高差は、小河川の流路の侵食によるものであることが観察された。

地層の変位、変形に関連した構造については、空中写真判読による断層の推定位置直下において、g1層の上面に比高約0.5 mの西上がりの急傾斜部が認められた。この高度差は、断層変位による撓曲である可能性はあるが、g1層は成層構造の明瞭でない砂礫層であり、剪断等の構造は内部には認められないので、断層活動が原因であるという積極的な証拠はない。またg1層を覆うc層は、ラミナの発達した砂層であり、g1層上面に高度差のある部分では上に凸なラミナが見られるが、断層によって変形したという証拠はない。b層より上位の地層は、c層を侵食して不整合に覆うが、断層による変位、変形は確認されない。

なお、平成13年度調査のピット調査で3000 y BP前後の年代を示す試料を含むb4層は、岩相から判断して調査地点背後のL1段丘面上に分布するクロボク土の二次堆積物であると考えられる。したがって、地層が実際に堆積した時期は、試料の年代値が示す時期よりも新しい可能性が高い。

図2−16 田光地区調査位置図(S=1:2,500)

図2−17 航測図化地形断面測量結果−田光地区

図2−18 地質断面図―田光地区

図2−19 田光トレンチスケッチ図

図2−20 田光トレンチ写真