(1)断層分布による区分

以下、布引山地東縁断層帯における各断層の形態による区分の可能性を述べる。

形態による区分の方法として、次の点に注目する。

a.断層帯の全体の方向が急に大きく変化する場合。

b.断層帯の全体の方向と異なる方向の分岐断層が出現する場合

c.断層帯と大地形の境界との位置関係

これらの注目点のうちb.は“断層帯の末端部は分岐する”という考え方(中田・島崎・鈴木,1998)を参考にしたものである。

まず、北方の鈴鹿東縁断層帯と布引山地東縁断層帯は、それぞれ断層帯全体が南北方向であるのに対し、その間にはこれとは異なる北東−南西方向に分布する断層(坂本断層)が存在することから、この境界で区切ることができる。また、布引山地東縁断層帯(北部)はほぼ南北方向に分布しており、形態上、一括できると見られる。布引山地東縁断層帯(北部)の南端部で、庄田断層は、他の断層が南北方向であるのに対し、北東−南西方向へと大きく方向を変えている。また、南端部は庄田断層と風早池断層に分岐していると見ることもできる。このことから、布引山地東縁断層帯は北部と南部の境界付近で区分できる。

布引山地東縁断層帯(南部)の小山断層ではH面の撓曲の方向(北東−南西:これを“小山撓曲”とする)と、鳥戸断層及び山口断層とは雁行しているが、全体としては直線的に続く。六呂木断層〜片野断層は分布が連続していることから一連の断層と見られる(岡田・東郷、2000と同じ)。あるいは、山口断層の南方延長が屈曲して六呂木断層〜片野断層に連続すると見ることも可能である。

また、布引山地東縁断層帯の各断層と大地形境界との位置関係から見れば、布引山地東縁断層帯(北部)は大半が前縁断層、同断層帯(南部)では小山断層・鳥戸断層・山口断層はほぼ境界断層、六呂木〜片野断層は花崗岩基盤岩中に分布し、いずれでもない。この意味では布引山地東縁断層帯の“北部”と“南部”は区分できる。

以上のことから、布引山地東縁断層帯は鈴鹿東縁断層帯とは区別され、さらに布引山地東縁断層帯(北部・南部)は、分布形態から次の2つに区分される。

@ 布引山地東縁断層帯(北部)全域

A 布引山地東縁断層帯(南部)全域

ただし、断層変位地形の分布形態だけからセグメントを区分することは困難である。