2−2−1 トレンチ調査の概要

平成12年度の片野断層の調査ではトレンチT3.2において、L2及びL3相当の段丘礫層を変位させる断層変形構造が確認された。ここではL2礫層の形成後、およそ2回活動したと推定されたが、L2礫層から年代試料が得られていないため、正確な活動間隔や最終活動時期が不明であり、今後の活動予測についても不確定であった。このため、今年度はこれらの不明点を解明する目的で、既存のトレンチT3.2の近傍でトレンチを掘削し、変形構造や断層活動時期を特定するように努めた。

トレンチ調査位置を図2−2−1,図2−2−2に、トレンチの概要を表2−2−1に示す。

表2−2−1 トレンチの概要

今回のトレンチは、昨年度のトレンチT3.2の北側に隣接して掘削したもので、これをT3.3とした。トレンチスケッチは片面(N面)のみである。委員会ではT3.2の南側の拡幅の案が出されていたが、南側は昨年度の作業で重機によって表土部分がかなり乱されている可能性があり、L3相当の堆積物の層状構造や断層変形は、南側より北側の方が明瞭であったため、北側を選択した。

以下、トレンチ調査の方法を述べる。

トレンチの掘削は以下の手順で行った。

・ 着手前の平板測量(1:200)・横断測量(1:100、1:200)

・ 掘削区画の設定

・ 重機による掘削

・ のり面の整形

・ 柵板の設置

・ 1mグリッドの設定(水糸張り)

・ 壁面スケッチ(1:20)

・ 写真撮影

・ 試料採取(年代測定・火山灰試料等)

・ 掘削後の平板測量(1:200)

・ 埋め戻し

・ 復旧の確認

トレンチ場所では掘削前後の形状の平板測量を行った。トレンチ溝はおよそ長さ7m×幅6m×深さ4m程度の規模とした。掘削勾配は1:0.5(63.4°)程度で土質に応じた安定勾配とした。掘削面はねじり鎌等で平滑に仕上げた後、1m間隔の格子状に水糸を張り、スケッチをした。掘削面のスケッチは、層序区分や堆積構造、変形構造等が読みとれるように表現し、1/20詳細図(付図)と、これを縮小した1/40図を作成した。トレンチ壁面は、壁面と全体のカラー写真を撮影し、主な堆積構造や変形構造等の近接写真も撮影した。壁面における炭化物、木片、有機質土壌は位置を記録して採取し、放射性炭素年代測定 (14C)に供した。同様に、火山灰試料についても採取した。なお、調査終了後は埋め戻して原形復旧し、地権者立ち会いの上で終了した。