(1)トレンチT2地点の山口断層−松阪市西野町

図3−2にボーリング、トレンチの結果を総合した地質断面図を示す。

トレンチの最上位の泥炭と腐植土層は東に傾斜しながら、ボーリングB3−1からB3−2までほぼ連続していると言える。西側のボーリングB3−1の上位から第2層の腐植土層は、形態上はトレンチの第2層につながるように見えるが、年代値の比較では、むしろ、トレンチの第3層とほぼ同年代である。トレンチの第3層はチャネル堆積物と見られるため、ボーリングの第2層腐植土と同時期であっても矛盾はない。

以上のように、ボーリングB3−1の第2層腐植土がトレンチの第2層に対比されるか、または第3層に対比されるかは明確ではない。しかし、地質踏査やボーリングからは、トレンチのすぐわきに花崗閃緑岩が一志層群に乗り上げる断層露頭があり、西側のボーリングB3−1では断層面を貫いていることから、トレンチ場所の深部に断層があることは確実であるが、沖積相当の地層は変位させていないことが考えられる。

また、トレンチ地点の南方150mの露頭(平成11年度に露頭剥ぎ調査、平成12年度にボーリングB6を実施)では山口断層がLf層を切っていないように見えるが、付近の地形面Lfには低断層崖があり、Lf面を変位させていることは確実である。

これらのことから、調査地の山口断層は段丘礫層Lfを変形させていたが、少なくともトレンチT2の最下層の堆積後、約1300 yBP以降は活動していないと判断される。なお、B6/露頭剥ぎ地点で確認された最新活動時期は約1万年前以降であり、トレンチT2地点の調査結果と矛盾しない。