(1)P1測線

@ 表層速度分布

図2−1−6の表層速度分布図から、本測線の地表付近の速度分布は次のとおりである。

地表下20m以深は速度2,000m/s以上で、全体として浅部から高速度である。

2,000m/sの速度コンターは、測点No.140より東側では地表下15〜20mにあるが、測点No.140の西側では全体に10m以浅にある。特に測点No.180付近は、地表から2,000m/s以上、10m以深では3,000m/s以上の高速を示す。No.150−180付近には基盤岩の高まりを示す地下構造が推定される。

A 反射面の分布状況

図2−1−3から本測線の反射パターンは次のとおりである。

測点No.180より東側では、標高−500m付近まで、平行する東傾斜の反射面が認められる。それらのイベントは、測線東端で傾斜はゆるく、西に向かって徐々に急傾斜となる。測点No.180より西側では、明瞭な反射面は認められない。

本測線で明瞭な反射面は、横方向の連続性が非常に良く、ずれが認められない。

B 反射断面の解釈

図2−1−3に解釈断面図を示す。上部に連続的で明瞭な3つの反射面が認められ、これより深い部分は不明瞭である。

いずれの反射面も測線東端で傾斜は緩く、西に向かって徐々に浅くかつ急傾斜となり、明瞭な撓曲構造を示す。反射面の傾斜は最大約40°である。それぞれの反射面は撓曲しながらも間隔にほとんど変化がないことから、それぞれの地層が堆積した後に、この撓曲構造が形成されたと考えられる。

上位から2,3層目の反射面およびその間の部分は、比較的振幅が大きく連続性の良い反射面が見られることから、砂岩層とシルト層〜粘土層との互層からなると推定される。一方、これより深部の反射面は、全体に振幅が弱く断続的であることから、砂岩層などの比較的均質な地層からなると推定される。地表地質踏査の結果から、No.140−190付近は新第三系一志層群の井生泥岩層(Iu)、No.140以東の上位層は三ヶ野凝灰質シルト岩砂岩層(Im)とみられる。この測線の西部のNo.150以西は東に急傾斜する地層が地表付近まで延びているように見え、速度層分布からみても基盤の高まり(表層部に低速度層を欠く)があり、この付近が侵食されていることを示すものと考えられる。また、この地層の急傾斜帯は北方の小山断層周辺に認められるH1面の撓曲帯の南方延長に一致する。P1測線付近には断層変形を被った地形面は認められないが、新第三系の撓曲活動がH1面の時代まで続いていたことを示唆する。

P1測線で最も明瞭かつ連続性の良い上位から3番目の反射面には、垂直方向のずれが認められないことから、少なくとも本地域には地層を変位させた断層が存在しないと考えられる。すなわち、当初、小山断層の撓曲構造や天花寺断層(岡田・東郷編、2000)の南方延長に当たるため何らかの変形構造の存在が予測されたが、それらは探査した限りではこの地域までは延びていないことがわかる。

なお、断面の表層付近に弱い水平方向の反射面が見られるが、平成11年度の地質踏査からこの付近には沖積面は認められるが段丘礫層は分布せず、伊勢自動車道付近のボーリング資料からも深さ数mで新第三系に達することがわかっており、ノイズと判断される。