1−1−2 調査目的

布引山地東縁断層帯は、三重県中部に分布し、亀山市から津市を経て久居市付近までほぼ南北に延びる。松田(1990)はこれを、断層長27km、断層長マグニチュード7.2の起震断層と位置づけている。また、活断層研究会(1991)によると、確実度T〜U、活動度B〜C級の複数の活断層から構成されている。

同断層帯は、三重県の災害対策機能の集中する津市(県庁所在地)に極めて近接して位置し、三重県の防災対策上極めて重要度が高い断層帯である。

三重県は平成9年3月に地域防災計画被害想定調査を行った。その中で、布引山地東縁断層帯は、中勢北部地域に最大の被害を与える断層帯として位置づけられている。地震発生時には、県庁所在地の津市を中心として、県内の広範囲で甚大な被害の発生が予想される。

一方、布引山地東縁断層帯は地震発生時の活動セグメントや活動履歴等について不明な点が多く、三重県では平成9〜10年度にかけ地震関係基礎調査交付金を受けて調査を実施した。その結果、平均変位速度分布傾向等から同断層帯の活動セグメントが2つに分かれる可能性が示された。そのうち南側のセグメントは断層帯の南端で平均変位速度が収束するかどうかは不明で、さらに南方への延長が示唆された。同断層帯の活動範囲がさらに南方へ延びることは、被害想定の基礎となっている従来の断層パラメーター等にも影響を与える。このことは、三重県の地域防災計画における被害想定を見直す必要性も含め、地域防災上大きな問題となる。

このような理由から、平成11年度は、従来の断層帯の範囲の南方から中央構造線までの間に存在する活断層を対象として、地形地質調査を実施した。活断層及びその周辺の地質や地形に関するデータの収集及び解析を行い、その結果、地形面区分、活断層の詳細な位置及び平均変位速度分布の概要等が明らかになった。

平成12年度は、前年度の詳細調査を踏まえた上で、物理探査、ボーリング調査及びトレンチ調査を実施し、詳細な地質構造及び地下構造の解明並びに活断層の位置を特定し、断層の活動履歴、単位変位量及び平均変位速度等を明らかにすることを目的とする。

以上の調査及び前年度までの調査から得られた結果に基づき、布引山地東縁断層帯の活動セグメントの評価及び地震規模の予測を行うと共に、長期的な地震発生の可能性等について総合的な評価を行う。

また、活断層の基礎的かつ定量的な情報の取得を通じて、想定される地震規模や活動予測の評価手法の高度化を推進するとともに、三重県の地域防災に資することを目的とする。