1−1−1 調査対象

布引山地東縁断層帯は、松田(1990)によると、断層長27q、活動度B級、最大地震規模ML*1=7.2の起震断層であり、亀山市から津市を経て久居市に至るほぼ南北方向に延びる確実度T〜U、活動度B〜C級の複数の活断層から構成されている。布引山地東縁断層帯に含まれる断層は「新編日本の活断層」(活断層研究会、1991)に記載されている明星ヶ岳断層、椋本断層、風早池断層、庄田断層であるが、三重県ではこれに白木断層を加えて平成9〜10年度に調査を行った。平成11〜12年度はこれらの断層のさらに南方延長に分布する活断層を対象として調査を実施した。

調査対象地域は三重県中部の一志町から嬉野町・松阪市を経て勢和村に至る、布引山地南東方から高見山地東方の地域である。調査対象断層は活断層研究会(1991)に示されている表1−1−1の断層で、これらは一志断層系の南端部に当たる。

調査対象の断層はほぼ南北方向に断続的に伸びており、山地と平野の地形境界のみならず東方の丘陵部にも断層が分布する箇所がある。また、一部は山地を貫いて分布する。

表1−1−1 調査対象地域の活断層一覧(活断層研究会、1991より)

なお、「新編日本の活断層」(活断層研究会、1991)に示されている「島戸断層」(No.5)は、地名や文献(恒石、1970など)から、「鳥戸(とりど)断層」の誤りと思われるため、本報告では「鳥戸断層」と表記した。また、調査対象の断層帯は本来の定義による「布引山地東縁断層帯」そのものではないため、本報告では便宜的に「布引山地東縁断層帯(南部)」とし、本来の定義による断層帯を「布引山地東縁断層帯(北部)」とした。

(注)*1 ML:断層長マグニチュード。松田(1975)は断層長Lの起震断層から生じる最大地震のマグニチュードML(断層長地震規模あるいは最大地震のマグニチュード)を次の経験式によって求めた。logL(km)=0.6 ML−2.9

*2 確実度:活断層研究会(1980)による活断層の存在の確かさを示す。

T:活断層であることが確実なもの U:活断層であると推定されるもの V:活断層の可能性があるもの

*3 活動度:松田(1975)による活断層の過去の活動の程度を示す。平均変位速度S(m/1000年)によって区分する。A:10 >S≧1、B:1>S≧0.1、C:0.1>S≧0.01

図1−1−1 調査対象断層帯位置図(活断層研究会、1991より抜粋加筆)