3−4 まとめと今後の課題

本調査により、地形・地質的特徴からみた布引山地東縁断層帯(南部)の概要が明らかになった。本調査地の北部については、平成10年度の調査で布引山地東縁断層帯の断層活動がさらに南方へ延長する可能性が示唆されていた。しかし雲出川の右岸地域では、布引山地東縁断層帯から連続するような断層の構造は不明確で、断層変位地形も認められなかった。一方、中村川左岸地域では高位面H1に傾動が認められた。また、高位面H1は天花寺付近で極めて緩傾斜になり、さらに東側に断層が存在する可能性が示唆される。地形判読・地表踏査では明らかにされなかったこれらの点について確認し、さらに北方の断層帯との連続性を検討するために、先第四系も含めた地下構造調査が必要である。

鳥戸断層に沿っては、低位段丘相当の地形面に明瞭な西上がりの断層変位地形が認められた。しかし鳥戸断層の南部では断層変位地形が不明瞭であり、また南西に雁行状に位置する山口断層との連続関係は不明である。また鳥戸断層と山口断層の間の地域は断層変位の傾向と基盤岩である花崗岩の分布形態が一致していない。今後、両断層間の花崗岩および一志層群の地下構造を確認した上で、断層運動について検討する必要がある。

山口断層においては比較的明瞭な西上がりの断層変位地形が認められ、露頭でも低位段丘堆積物相当の礫層に花崗岩が乗り上げる低角逆断層が確認された。この断層は繰り返し変位を生じている可能性があり、活動履歴について今後さらに検討する必要がある。

六呂木断層と山口断層との連続関係は地形的に必ずしも明瞭ではない。また六呂木断層北部の断層変位地形も明瞭ではない。また六呂木断層南部は地形的に片野断層に連続する可能性が高い。

片野断層については、高位段丘面から低位段丘面にわたる累積的な断層変位地形が認められる。しかし片野断層の南端部では断層変位地形が明瞭に確認できず、中央構造線との連続関係についての詳細は現在のところ不明である。

地形断面測量などによる本断層帯の延長方向に沿った平均鉛直変位速度は0.05〜0.14m/千年程度であり、B〜C級であることがわかった。また本断層帯の北端部では活動度、確実度ともに低く、比較的古い時代の活動の痕跡しか認められないが、中〜南部では比較的活動度が高く新しい時代の活動が認められる傾向がある。さらに本断層帯で完新世の地形面に断層変位地形が認められる箇所はごく少ないが、低位段丘相当の地形面で断層変位地形が認められる箇所がある。したがってこのような地点についてさらに詳細な調査を行って、最近の活動履歴を解明し、最終活動時期と活動間隔について検討する必要がある。

以上の点をふまえて、以下の調査を提案する。

<今後の調査計画(案)>

@ 物理探査:浅層反射法探査

地表踏査ではとらえられない深部の地下構造を探る。特に、小山断層の南方延長における断層構造の有無、鳥戸断層の位置と断層構造、及び、鳥戸断層〜山口断層の断層構造(基盤構造)は重要な探査目標である。探査深度は500〜800m程度を目安とする。

A ボーリング調査(調査地点については要検討)

断層を挟んで複数のボーリングを行い、地層深度から地層の傾斜・変位量等を把握する。また、年代測定用試料を採取する。

B トレンチ調査

断層の存在が想定される箇所でトレンチを掘削し、断層構造・変位量の確認、活動間隔・最終活動時期の検討する。活動時期を知るために、年代測定用資料および火山灰分析用試料の採取等を行う。