3−1−2 鳥戸断層の活動特性及び山口断層との関係

鳥戸断層に沿っては、各所に比較的明瞭な西上がりの断層変位地形があり、一部では基盤の花崗岩が東側の段丘礫層に衝上しているのが認められる。また山麓には扇状地がよく発達しており、とくに松阪市伊勢寺町付近に発達する低位段丘相当の扇状地(Lf)は、勾配が1/20〜1/50と東に向かってかなり傾斜している。このような扇状地が発達した要因の一つとして、鳥戸断層の活動が関与している可能性がある。

鳥戸断層南部の堀坂川以南では、断層変位地形が確認された場所よりもさらに東側にも地質断層が確認された。しかしこの断層は高位面H1に変位を与えていない。その原因としては、東側の断層は高位面H1形成以前まで活動していたものの、その後活動の場が西側に移動した可能性が考えられる。

また松阪市西野町では、鳥戸断層の南端部の東側にも基盤の花崗岩類が分布する。これは本断層帯のその他の地域で平野側の基盤岩が相対的に低下する傾向を示し、少なくとも花崗岩類が地表には現れていないことと一致しない。花崗岩の分布高度から見れば西側の山口断層と東側の鳥戸断層の南部とに挟まれた領域は、花崗岩の分布高度が相対的に低い“地溝”状の構造をなしている。しかし西側にある山口断層は基盤の花崗岩が段丘礫層に乗り上げる逆断層であり、一方、東側にある鳥戸断層南部の断層変位地形も西上がりを示しているので断層変位の向きは基盤岩の分布の傾向とは一致しない。

なお、鳥戸断層、山口断層とも阪内川付近より南には断層変位地形を追跡することができない。