(1)地質概要および地質区分

調査地の主な地質は、先第三系基盤岩類(領家帯、三波川帯、和泉層群)、新第三系(一志層群、東海層群)、および第四系(段丘・扇状地堆積物、沖積層)に区分される。調査地に分布する地質を表1−6の地質構成表に示す。

表1−6   地質層序表

(1) 先第三紀基盤岩類

先第三紀基盤岩類は、端山ほか(1982)や高木(1985)の区分に従い、三波川帯、領家帯及び和泉層群に区分した。三波川帯は中央構造線の南側、領家帯は北側に広く分布し、和泉層群は中央構造線の北側に沿って狭長に分布する。また中央構造線近傍には、時代未詳の花崗斑岩の小貫入岩体が分布する(高木、1985)。

領家帯は花崗岩類、変成岩類および塩基性岩類から成り、調査地では花崗岩類が大半を占める。領家花崗岩類は、新期花崗岩類と古期花崗岩類に区分され、古期花崗岩類は中央構造線に近接する地域でマイロナイト化している。

(2) 新第三系

新第三系は中新統の一志層群と鮮新統の東海層群に区分される。一志層群は松阪市笹川町の阪内川を南限として、主に一志断層系東側に北東側へ開いた堆積盆地を形成するが、中村川付近以北の広い範囲と、堀坂川流域では、一志断層系の西側にも堆積盆地を形成している。一方、東海層群は堀坂川付近を南限として一志断層系の東側に分布し、北東へ開いた堆積盆地を形成する。全体に、堀坂川以北では、一志断層系東側に一志層群とこれを不整合に覆う東海層群が比較的厚く分布することが想定されるが、堀坂川から阪内川にかけては、一志層群は薄く、下位の領家花崗岩類を起伏に富んだ不整合で覆っている。新第三系は全体に南北方向の走向を有し、緩やかに東へ傾斜することが多いが、一志断層系の近傍ではしばしば東へ急傾斜する。

一志層群の区分は、基本的に柴田(1967)を踏襲した。柴田(1967)は、一志層群を、その層相及び産出化石から3回の堆積サイクルが認められる海成堆積物であるとし、下位より波瀬・大井・片田の3累層に区分した。調査地には、波瀬累層の中・上部層、大井累層の上部層、及び波瀬累層と同時異相関係にある家城累層が分布する。

調査地の鮮新統は、既存文献では「奄芸層群」と呼ばれていることが多い。しかし本報告では平成9年度お呼び平成10年度調査と同様に、近年出版された地質図幅「津西部」及び「津東部」(地質調査所)にならって「東海層群」の呼称を用いる。東海層群は河川〜湖沼性の堆積盆地に形成された陸成層である。

(3) 第四系

調査地には、領家帯花崗岩類や新第三系を覆って、中期〜後期更新世の段丘堆積物、扇状地堆積物、および沖積層が分布する。

段丘堆積物は、沖積面からの比高、連続性、開析度および堆積物の層相から、高位・中位・低位の各段丘堆積物に区分した。さらに高位段丘堆積物を2区分、低位段丘堆積物を3区分に細分した。

また堀坂川以北の桝形山から観音岳に至る山地の東麓に分布する扇状地については、段丘面との関係から、それぞれ中位扇状地堆積物、低位扇状地堆積物とした。また主に櫛田川北岸で低位段丘を覆う比較的小規模な扇状地の構成層を新期扇状地堆積物fとした。

@ 高位段丘堆積物 H1, H2

砂礫層を主体とし、礫の大半が内部まで風化の進んだいわゆるクサリ礫であることと、上部に厚さ最大数mの赤色化土壌を伴うことを特徴とする。特にH1面の礫層は赤色化が激しい。

A 中位段丘堆積物 M

クサリ礫の比率が一般に50%以下の砂礫層を主体とする。赤色化土壌を伴わないが、堆積物中の砂質土〜シルトが風化して黄褐色〜にぶい黄橙色を呈することがある。

B 低位段丘堆積物 L1, L2, L3

砂礫〜砂を主体とし、クサリ礫を含まない。また堆積物の風化、変色は認められない。櫛田川では、3段の低位段丘面が見られ、それぞれの構成層を低位1、2、3段丘堆積物とした。

C 扇状地堆積物 Mf, Lf, f

主に堀坂川以北の鳥戸断層東側に分布する。扇状地堆積物は主に砂礫から成り、クサリ礫を10〜50%程度含むものを中位扇状地堆積物、クサリ礫を全く含まないものを低位扇状地堆積物とした。