(4)トレンチ調査−椋本M3地区

図2−3−9参照)

(1) トレンチの地層構成

トレンチTM3はM2面上の逆向き低断層崖付近で掘削した。

トレンチで見られた地層は、下位より、段丘面M2を構成する礫層(G)、砂層(Sd)、細砂礫(Sg)を挟む青灰色シルト(Sil−1,2)、さらに、泥炭(Pt)、粘土質シルト(Cl)、オレンジシルト(OS)、凝灰質シルト(TS)の順となる。この上位には土壌(S1、S2、S3)がのる。OSの下部には広域テフラAT(最大層厚1.5cm)が認められた。Sil−2の上部は断層の下盤側では有機質で暗褐色を呈す。

14C年代は、Sg直上の腐植土(土壌)が約3.0〜3.4万年前(よってSgを約3.5万年前と推定)、泥炭(Pt)が約2.5万年前、S2(腐植土)が約3,300年前である。TSはATの直上に整合的にのることから、その年代は約2.2万年前頃*と見なされる。

なお、トレンチS面ではS2、S3からプラントオパールを多産し、S2からは古墳時代と推測される土器片が出土しており、S2、S3の大半が人工的に攪乱されている可能性が高い。

(2) 地質構造

座標No.6〜7付近の底部に東上がりの逆断層が複数条発見された。断層面は段丘礫層内では不明瞭であるが、扁平礫が断層方向に配列する傾向がある。Sil−1内では明瞭な破断面が認められる。断層の走向・傾斜はN26°−36°W/43°−56°Eである。断層はSil−1を明瞭に切っており、Sgを著しく撓曲変形させている。S面ではSgを断層変位させている。Sil−2には断層破断面が認められない。上位のPt以上の地層は撓曲変形が顕著であるが、せん断はされていない。PtとTSは断層の上盤側でやや薄かったり、ちぎれたりするものの、断層の両側に分布する。

(3) 断層活動の考察

断層はG、SdからSil−1まで切っていることが確実である。SgはN面では強い撓曲変形を受けており、S面では断層によりせん断されている。Sil−2は上下を水中堆積層(Pt、Sg)に挟まれ、下盤側の層厚増大と撓曲が認められる。また、TSにも撓曲が認められる。Sil−1はトレンチだけでは下盤側の下限が不明のため、ここでは断層変形の有無を論じられない(後述)。

以上の点から、本トレンチでの断層活動は以下のように推定される。

a Sil−2堆積中(Sg〜Pt間:2.5〜3.5万年前)

b TS堆積後   (TS以降:2.2万年前以降〜現在まで)

Pt〜TS間は、N面で断層の下盤側の層厚が厚い傾向があるが、S面では等厚であるため、この間には断層活動を認めがたい。

本トレンチでの断層活動の全容は総合解析で検討する(後述)。

*(注)広域火山灰ATの年代は既存文献から2.2(−2.5)万年前とされており、ここでは代表値として2.2万年前を用いる。したがって、AT以降とは2.2万年前以降を意味する。